「遺留分」と「特別受益」の関係は?相続の法的なルールを弁護士が徹底解説! |千葉県船橋市の相続の経験豊富な弁護士

「遺留分」と「特別受益」の関係は?相続の法的なルールを弁護士が徹底解説!

「遺留分」と「特別受益」は相続で重要な法のルールです。この記事では、遺留分と特別受益の関係を徹底解説します!遺留分の基礎知識や、特別受益の定義や具体例、持ち戻し免除の仕組みまで詳しく解説。相続のトラブルを回避するためのポイントや法律的な注意点も網羅し紹介します。遺産分割や相続手続きで迷ったら必見の内容です!

 

はじめに

 

相続は親族間で行われる大切な手続きです。相続において「遺留分」と「特別受益」は、相続人にとって重要なルールです。遺留分は、法定相続人に保証されているものであり、相続における公平性を保つための制度です。一方、特別受益は、被相続人から特定の相続人が生前に受け取った利益を指しています。この特別受益が遺産分割に影響を与えることがあります。この記事では、遺留分と特別受益の基本知識から、計算方法や法律上のルール、さらに両者の関係性や実践事例までを徹底解説します。

 

遺留分と特別受益の基礎知識!

遺留分と特別受益はあまり聞き慣れない言葉ですが、相続においてとても重要なルールです。遺留分とは、法律が認める相続に関する重要な法定相続人の権利です。また、特別受益は遺贈や生前贈与された財産を指しているのですが、相続で誰がいくら相続するのかという具体的な額に大きな影響を与えることがあります。

遺留分は生前の遺言でも侵害できない!初心者でもわかるその意味と重要性

 

遺留分とは、法律で定められた相続人に対して保証された遺産の額です。仮に、被相続人が「自分の財産はすべて○○寄付する」と遺言書を残していたとしましょう。その場合でも、遺留分にあたる金額に関しては法定相続人に相続する権利が発生します。遺留分が認められるのは被相続人の配偶者・子・直系尊属(親や祖父母)です。亡くなった方に、配偶者と子がいる場合は、直系尊属(親や祖父母)は法定相続人にはなりません。このように、遺留分が法律で保証されている親族のことを「遺留分権利者」といいます。

 

つまり、亡くなった本人であっても、法で定められた遺留分を侵害することはできないのです。

 

この遺留分があることで、遺産相続の不公平感を減らすことができます。

特別受益とは何か?知っておきたい基本ポイントと法のルール

 

特別受益とは、特定の相続人が生前に受けた利益を指します。例として、子どもの結婚資金や住宅購入の援助を受けていた場合などがこれに該当します。

 

  • 遺贈
  • 生前贈与(婚姻・養子縁組・生活の資本)

 

上記は特別受益に該当します。

 

遺贈とは、遺言によって譲渡される財産です。これは、生前に意思表示が行われますが、実際に財産が移転するのは被相続人が亡くなった後です。加えて、生前贈与は、亡くなる前に財産を無償で譲渡したというもので、法的には「贈与契約」となります。

 

そして、生前贈与のうち以下のものが特別受益とされています。

 

  • 婚姻のための生前贈与
  • 養子縁組のための生前贈与
  • 生計の資本としての生前贈与

 

参考:民法九百三条一項|法令検索

 

解りやすく説明するのであれば、結婚するときの費用として親が子に渡したお金や、養子縁組をした際に分け与えた財産、そして、生活を援助するために支出した額はすべて「特別受益」ということになります。

 

ただし、上記に当てはまらない贈与(学費やお祝い金)もあります。

 

そして、特別受益となる譲渡のうち相続開始前から過去10年の間に行われたもののみが、遺留分の対象となります。つまり、特別受益となる譲渡がいつ行われたかが、遺留分権利者が受け取る金額に大きく影響するということになります。

 

遺留分に関する遺産相続に関する法を知ろう

 

遺留分は民法で定められた権利です。この、遺留分に関しては、例える被相続人の遺言であっても侵害することはできないという強力な権利でもあります。ここでは、遺留分に関する法律について解説します。

 

遺留分に関連する法のルールとその概要

 

遺留分に関する規定は、民法の1042条以下に定められています。

 

民法1042条 遺留分の帰属及びその割合…遺留分は配偶者、 子、 直系尊属に認められる。兄弟姉妹は除外される。
民法1043条~1045条 遺留分を算定するための財産の価額…遺留分の割合
民法1046条 遺留分侵害額の請求…遺留分を侵害された場合は請求できる
民法1047条 受遺者又は受贈者の負担額…遺贈や贈与に関する規定
民法1048条 遺留分侵害額請求権の期間の制限…1年。もしくは相続発生から10年で遺留分侵害額請求権が証明する
民法1049条 遺留分の放棄…遺留分は放棄できる

 

参考:民法千四十二条以下|法令検索

 

遺留分に関しては、誰に与えられる権利なのかだけでなく、相続の割合や遺留分が侵害された場合の請求権についても細かく法で規定されています。

 

上記の表からも解るとおり、遺留分は法で保証されたとても強い権利です。この遺留分は、例え被相続人の遺言であってもそれを侵害することはできません。もちろん、相続人の一部や親族であっても遺留分を侵害する権利はありません。

 

そして、相続が発生した場合には遺留分と特別受益に関するルールがとても重要になります。

遺留分は法で守られた相続人の権利!相続の基本的な仕組みとルール

 

遺留分が認められるのは、亡くなった人の配偶者・子・親や祖父母などの直系尊属です。ここには、兄弟姉妹は含まれていません。

 

そして、遺留分に関しては誰が相続人であるかによって割合が異なります。

 

  • 配偶者や子の場合→相続財産全体の二分の一
  • 配偶者が子、孫がいない場合で直系尊属が相続する場合→相続財産全体の三分の一

 

相続財産のうち、遺留分の対象になる財産を相続人が法定相続分に従って分けることになります。

 

配偶者と子供が相続人である場合、遺留分は相続財産全体の二分の一となります。この二分の一のうち、配偶者が半分。もう半分を子供が分けるということになります。配偶者は、ひとりで遺留分の半分を相続できます。ですが、子供は遺留分の半分を各人数で等分にわけることになります。

 

配偶者や子がおらず、直系尊属が相続人となった場合は、遺留分は相続財産全体の三分の一

です。この相続財産を法定相続人で分配します。

遺留分が侵害された場合の対策と解決方法!弁護士に依頼する?

 

遺留分については、一般的にあまり知られていないということもあって侵害されるケースがあります。相続に関しては、感情的になる場面もありますし、相続人や親族間の力関係で相続分が決められてしまうケースもあります。

 

遺留分が侵害されている場合は、侵害された遺留分の額を限度として支払い請求することができます。

 

ただし、遺留分の侵害があったことを知ってから1年。遺留分の侵害があったことを知らずに10年経過した場合は請求権が消滅します。

 

遺留分が侵害されていると解った場合は、できるだけ早い対処が必要です。

 

できるだけ早く法律事務所で弁護士に相談して、法的な対応をとるのが望ましいでしょう。

 

遺留分が減る?特別受益の計算方法を解説

 

ここからは特別受益について解説します。遺産相続や遺留分との関係についても知っておきましょう。

特別受益の計算基準と基本的な算定方法

 

特別受益を計算する時の基本は「みなし相続財産」です。相続が発生した時点での相続財産、特別受益を足したものをみなし相続財産とします。

 

そして、このみなし相続財産をベースにして、特別受益がある法定相続人は法定相続分もしくは遺留分から特別受益で受けた金額を差し引いた金額を遺産相続として相続します。

 

ただし、持ち出し免除が認められる場合は、特別受益を算入せずに遺留分の対象となる相続財産が分配されます。つまり、特別受益が遺留分から差し引かれるかどうかで相続できる額が大きく変わる事があるということです。

特別受益の持ち戻し免除とは?その意味と遺留分への影響

 

持ち出し免除とは、被相続人が生前贈与などで与えた利益に関して、遺留分に含めないようにすることです。持ち出し免除に対して、特別受益を遺留分に含めることを特別受益の持ち出しといいます。

 

相続において、特別受益の持ち出しが行われると生前の被相続人の意思に反する形での相続となる可能性があります。ですが、持ち出し免除を行うことで特定の相続人に財産を継承できるようになります。

 

特別受益の持ち戻し免除は遺言でも可能

 

持ち出し免除は以下の方法で行えます。

 

  • 明示の意思表示
  • 暗黙の意思表示
  • 20年以上の婚姻期間がある配偶者が居住するための不動産の贈与

 

まず、明示の意思表示とは、遺言書や贈与契約書などで「特別受益の持ち出しを免除する」という意思を明確に表示している場合です。

 

続いて、暗黙の意思表示は書面での意思表示はないものの、被相続人の事情によって行われる持ち出し免除です。例えば、被相続人に対する寄与度が高い法定相続人に対しての持ち出し免除(介護をしていた等)などがあげられます。

 

最後に、婚姻期間が20年を超えている配偶者に居住用の不動産を贈与した場合です。これは、別荘などではなく、配偶者が居住するための不動産に限られます。被相続人が亡くなった時点での配偶者に対してのみ有効です。元妻や元夫には適用されません。

 

相続の遺留分と特別受益の違いを理解する

 

遺留分と特別受益は全く異なるものです。ここでは、その違いを解説します。

 

遺留分と特別受益の基本的な違いをわかりやすく解説

 

遺留分は、法定相続人に対して認められた最低限の相続分のことを指しています。そして、特別受益は、法定相続人に対して行われる遺贈や生前贈与のことです。

 

どちらも被相続人から財産を譲り受けるという点においては同じですが、遺留分と特別受益はその意味が大きく異なります。

 

遺留分に関しては、その対象になる相続は法律で保証された相続分であるのに対して、特別受益は被相続人の意思によって譲渡される財産です。

遺留分が侵害された場面での特別受益の取り扱い

 

遺留分が侵害されている場合において、特別受益は大きな意味を持ちます。特定の法定相続人が特別受益を受けた場合には、その特別受益によって得られた利益は遺留分に含まれるため相続できる金額が大きく変わります。

 

これは、遺留分侵害の場合でも同様で、請求できる金額は法定相続人の特別受益を算入して計算された遺留分が上限となります。

 

相続における特別受益について

相続が発生した場合の特別受益について解説します。

生前贈与が特別受益になるケースとは?

 

生前贈与が特別受益として計算されるのは、被相続人が亡くなる10年前までの間に贈与されたもののみです。亡くなる10年より前に贈与された財産に関しては、特別受益には該当しません。

 

この10年という期間内に贈与された「結婚資金」「養子縁組の際の贈与」「生活の資本」が特別受益となります。

 

学費や祝い金に関しては、原則として特別受益には含まれません。ただし、額が大きい場合は特別受益と見なされるケースもあります。

 

特別受益の期間である亡くなるまでの10年以内に法定相続人に対して贈与された上記の財産は、特別受益となります。つまり相続財産の遺留分に含まれることになります。

 

遺留分と特別受益で起こる相続のトラブル回避は?

 

相続の問題は第三者との間で発生するケースもありますが、多くの場合相続人同士の争いになります。

法定相続人は、親族であるためできるだけお金のトラブルは回避したいものです。

 

相続が発生した場合に感情的にならずに法律に従って相続をするためには、弁護士に相談して第三者の視点で公平に分配するのが最も平和です。

 

場合によっては法の流れに従った分配のために弁護士に依頼するのもひとつの方法です。

まとめ:遺留分と特別受益は相続の額を左右する重要なポイント

相続における「遺留分」と「特別受益」は、相続人間の公平を保つために重要な役割を果たす制度です。遺留分は、法定相続人に保証された最低限の相続分であり、特定の相続人への贈与や遺言による財産分配が不公平にならないよう調整するためにつくられた制度です。一方、特別受益は生前贈与や遺贈による利益を指し、原則として相続財産に持ち戻して計算されます。ただし、被相続人が持ち戻し免除を希望していた場合などは、この計算結果から除外されることもあります。

 

このような、遺留分と特別受益の仕組みを理解し、計算方法や法律のポイントを押さえることで、相続トラブルを未然に防ぐことができます。公平で客観的な相続を進めるには、専門家の助言を活用し、解決することも大切です。

この記事の監修者

藤岡 隆夫弁護士 (千葉県弁護士会所属所属)

FUJIOKA TAKAO

千葉県は、特に相続問題が発生しやすい土地ではないかと感じています。東京に近い一方で、昔ながらの習慣が残っており、代々続く家を守ろうとする考え方は、現代の相続法と相いれない場面があります。相続問題は、よく言われますが、「我が家に限ってもめるはずがない」と考えていたのに巻き込まれてしまう、というケースが散見されます。いつ発生するか分からない問題です。また、将来のことを考え、遺言などで準備することもできます。西船橋駅を中心とした地域で相続・遺言などの問題にお困りの際には、是非とも一度、藤岡法律事務所までご相談下さい。

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