審判
審判
遺産分割や離婚、成年後見の開始等で「審判」という言葉をよく耳にします。一般にイメージされる、裁判(訴訟)と何がどう違うのかを解説します。
審判とは
審判(家事審判)とは、家庭裁判所が、家庭に関する事件を、訴訟手続きによらないで、合目的的な裁量に基づき具体的に妥当な解決を目指す手続きないし制度のことをいいます。
調停が当事者の話し合いで解決を目指す手続きであるのに対し、審判と訴訟(判決)は家庭裁判所が審理した結論をもって解決する手続きで、審判も広い意味で裁判(裁判所が結論を決める手続き)に含まれます。
訴訟との違い
訴訟は公開され、対審構造をとり、当事者の主張する請求や提出された証拠によって審理される口頭弁論を経て判決が下されます。
これに対して、審判は、プライバシー保護のために非公開で、対審構造をとらず、裁判官は当事者の申立て内容に拘束されず、相当と認めるときは、裁判官だけで審判を行うことができます。
両者の大きな違いは、裁判所が当事者の主張や証拠のみならず、独自に調査した資料からも結論を導くことができる点(職権主義)です。審判が扱う家庭や家族に関する問題は、短期間で処理しなければ関係者の日常生活に重大な支障をきたすおそれがあるため、簡易迅速かつ弾力的に処理する必要があるからです。
審判の対象
では、どういった事件が家事審判の対象となるのでしょうか?
家事審判になるものは、家事事件手続法により定められています。
なお、「合意に相当する審判」「調停に代わる審判」は、厳密にいうと調停手続きであり、審判ではありません。
家事審判手続きにおける審判事項には、別表第一類審判事項と別表第二審判事項があります。(他に審判前の保全処分など、特殊なものが第2編に規定されています。)
別表第一審判事項
- 成年後見、保佐、補助の開始
- 不在者の財産管理・失踪宣告
- 嫡出否認など親子関係に関するもの
- 特別養子縁組
- 未成年後見
- 推定相続人の廃除
- 相続放棄申述の受理
- 限定承認申述の受理
- 相続人の不存在の場合における相続財産の管理
- 特別縁故者に対する相続財産の分与
- 遺言書の検認
- 遺言執行者の選任
- 任意後見
- 子の氏の変更
などです。
これらは、紛争性がないため調停の対象にはならず、家庭裁判所が公的立場から後見的に判断していきます。
別表第二審判事項
- 婚姻費用分担に関する処分
- 子の監護に関する処分(養育費、面接交渉)
- 財産分与に関する処分
- 親権者の指定又は変更
- 扶養の程度又は方法についての決定
- 遺産分割
などです。
これらは紛争性があり、まず調停の対象とされます。当事者の協議で解決できなかった場合(調停不成立)に、自動的に審判に移行し、家庭裁判所の最終的な判断で解決されることになります。
(不服申立て)
これらの審判に不服があれば、特別の定めがある場合をのぞき、高等裁判所に対し、2週間以内に即時抗告ができます。これは、訴訟における控訴にあたるものです。
さらに即時抗告についての決定に不服があったとき、憲法違反を理由とするときには、最高裁判所に特別抗告をすることができます。これは、訴訟における上告にあたるものです。
(審判の効力)
審判が確定すると、それには形成力・既判力・執行力が生じます。
権利者から家庭裁判所に申し出をすれば、裁判所は、義務者に対して、義務の任意の履行を求める「履行勧告」をすることできます。
それでも応じない場合は、民事執行法に基づく強制執行手続きをとることになります。たとえば、養育費のような金銭支払い命令であれば、相手方の給料債権を差し押さえるなどです。
最後に
家事審判に関わる事件はデリケートな内容が多く、法律上の手続きにまで頭が回らないことが多いのではないでしょうか?この点、弁護士であれば手続き選択から始まって、調停・審判・訴訟・執行手続きまで、適切に助言できます。ご依頼人の人生に寄り添いながら終局的な解決までサポートします。