特別受益 | 千葉県船橋市の相続の経験豊富な弁護士

特別受益

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具体的相続分の算定

民法第900条において、法定相続分は、以下のとおりに定められています。

  • ・子及び配偶者が相続人各2分の1
  • ・配偶者及び直系尊属が相続人配偶者3分の2、直系尊属3分の1
  • ・配偶者及び兄弟姉妹が相続人配偶者4分の3、兄弟姉妹4分の1

しかし、相続人の中に、故人からの生前の贈与や遺贈によって特別な利益を受ける者がいる場合に、法定相続分通りに相続分を計算すると不公平な事態が生じます。
そこで、この特別な利益(「特別受益」)を相続財産に含めて、具体的な相続分を算定することになります(特別受益の持戻し)。

特別受益

民法903条1項で特別受益とされるのは以下のものです。

  • ・遺贈(すべての遺贈、死因贈与を含む)
  • ・生前になされた婚姻のための贈与
  • ・生前になされた養子縁組のための贈与
  • ・生前になされた生計の資本としての贈与

具体例

では、特別受益に該当する場合で、とくに問題となる以下の事例について解説していきましょう。

①婚姻の際の結納金、挙式費用

結納金は、従来親が出すものと考えられてきたことから、特別受益に当たらないと考えるのが一般です。
挙式費用についても、財産として残るものではないので、特別受益に当たらないと考えるのが一般です。
これに対して、持参金や支度金は特別受益の対象に当たる可能性があります。
これらは援助の名目だけではなく、具体的な金額、他の兄弟姉妹との釣り合い等、相対的に判断されます。「遺産の前渡し」と評価できる場合に限り、特別受益と判断されることになります。

②被相続人に不相当額の学費を出してもらった

被相続人の資産、社会的地位などに照らして相当の範囲内のものであれば、特別受益にあたりません。
ただし、ひとりには、大学院までの学費、留学費用まで出しておきながら、もうひとりは、中学校卒でそれ以降の学費が発生していないなど、兄弟姉妹間で著しい差がある場合は、前者について特別受益とされる場合があります。

③被相続人(亡父)が相続人(長男)の連帯保証人、身元保証人になり、多額の債務を支払って、求償していない

被相続人(亡父)が保証債務の支払いをしていた場合は、これも相続人(長男)の相続分の前渡しとして、生前贈与にあたり、特別受益に含まれます。

④多額の生命保険金を受け取った

生命保険の受取人として指定された者は、保険契約にしたがって、保険金を受け取ります。よって、生命保険金の受け取りは、本来、被相続人の死亡を原因とする「相続」ではありません。よって、特別受益にも当たらないのが原則です。
しかし、共同相続人の中の一人が多額の生命保険金を受け取る場合は、実質的に不公平が生じる場合があります。
そこで、受取人の生活状況、保険金額の遺産総額に占める割合、被相続人に持戻し免除の意思があると推測できるか(あえて特定の相続人を受取人に指定した意図が、その相続人の生活保障にあるなど)等などの事情を考慮して、特別受益に当たるかどうかを判断します。

⑤死亡退職金などの遺族給付を受けた

この場合も共同相続人の中の一人だけが死亡退職金を取得すると、実質的に不公平が生じる場合は、受取人の生活状況、退職金額の遺産総額に占める割合などの事情を考慮して特別受益に当たるかどうかを判断します。

特別受益の計算

財産の評価基準

特別受益とされた財産の評価は、相続開始時の価格で行われます。
たとえば、10年前に金銭の贈与を受けていた場合、それを消費したとしても、相続開始時の貨幣価値に換算します。また、10年前に不動産の贈与を受けていた場合、相続開始時の時価で換算します。

具体的な算定方法

特別受益者がいる場合の具体的な相続分の算定は、次のように行います。

・特別受益を受けた者の相続分
=(相続開始時の相続財産の価格+特別受益とみられた贈与の価格)×(各自の法定相続分または指定相続分)-(特別受益の贈与または遺贈の額)
 
・特別受益を受けていない者の相続分
=(相続開始時の相続財産の価格+特別受益とみられた贈与の価格)×(各自の法定相続分または指定相続分)

最後に

以上のように、特別受益については、まず、問題となる贈与等が特別受益に該当するか否か、該当するとして、その評価額をどのように計算するかについて、非常に専門的な知識が必要となってきますので、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

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