遺言無効確認 | 千葉県船橋市の相続の経験豊富な弁護士

遺言無効確認

遺言無効確認

遺言は、相続において非常に重視されます。遺言に従い故人の財産は分配され、遺族の生活をも左右するものです。
しかし、この遺言の効力に問題がある場合には、その遺言の効力を争って(無効を確認し)、そのような遺言に基づく遺産の分割・承継を阻止する必要があります。
ここでは、遺言の無効事由、さらに無効確認訴訟について説明します。

無効事由

遺言の無効事由としては、主に以下のものがあります。

  • ・方式違反
  • ・遺言能力の欠如
  • ・共同遺言
  • ・遺言の内容が公序良俗違反
  • ・後見の計算終了前の被後見人から後見人らに対する遺言の制限に違反した場合(民法966条)

また、「無効」ではありませんが、遺言が錯誤に基づく場合、詐欺や強迫に基づく場合には、取消の対象となります。
このうちよく問題となる方式違反、遺言能力の欠如、錯誤に基づく遺言について、各遺言書の特徴と照らし合わせつつ、説明します。

1 方式違反

方式違反とは、自署によらない記載がある、日付の特定ができない等の遺言書の法定の形式(要式性)を欠く場合をいいます。
遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。
この中で、最も簡易で、費用がかからないのが自筆証書遺言です。ただ、その反面、遺産目録を除いて、すべて自署する必要があります。このため方式違反で有効性に問題が生じる場合が最も多いのが特徴です。
この無効となるケースを減らそうと、相続法改正がなされました。
まず、2019年1月13日から、預貯金、不動産などの遺産目録の記載については、全部を自筆により作成する必要はなく、パソコンで作成したり、預金通帳のコピー、登記事項証明書のコピーなどを目録として添付することが可能となりました。ただし、目録の各用紙には、署名押印することが必要です。
また、2020年7月10日からは、法務局で自筆証書遺言を保管してもらえる制度(自筆証書遺言書保管制度)が開始され、この制度を利用することによって、自筆証書遺言の紛失、遺言の内容によって不利益を受ける者による隠匿、偽造の危険性がなくなりました。従来と比べて、自筆証書遺言の活用の場面がさらに広がったといえるでしょう。
これに対して、公正証書遺言は、費用もかかり公正役場で作成しなければならず、さらに証人2人の立会いまで要求されて煩雑ですが、元裁判官や元検察官などが務める公証人のもとで作成されることから、信頼性が高く、有効性に問題が生じる場合はほとんどありません。

2 遺言能力の欠如

遺言能力とは、有効な遺言をすることができる能力をいいます。具体的には、満15歳以上であること、かつ、遺言事項を具体的に決定し、その効果を理解するのに必要な能力が必要です。
遺言能力については、当然ながら自筆証書遺言で多く争われますが、公正証書遺言でも問題となる場合があります。
この点判例は、遺言能力について、以下の事情を考慮するとしています。

  • ・遺言当時の遺言者の心身の状況及び健康状態
  • ・発病時~遺言時~死亡時の時間的間隔
  • ・遺言前後にわたる遺言者の言動及び精神状態
  • ・遺言の動機や理由
  • ・遺言者と相続人・受遺者との人的関係等

その上で、たとえ認知症であったとしても、他者とのコミュニケーション能力や自己の置かれた状況を把握する能力を相当程度保持していれば遺言能力があるとしています。
このように、遺言能力の有無の判断については、いろいろな要素が考慮されますが、一義的に判断できないために、微妙な判断となることもあり、自筆証書遺言で争われることが多いことに加え、公正証書遺言でも遺言能力が争われる場合があります。

3 錯誤に基づく遺言

遺言も法律行為である以上、民法に従って規律されます。遺言に関する重要な事実について誤解していた場合には、その遺言は遺言者の真意に基づかないことになります。従って、遺言者(遺言者が亡くなった後は相続人)は取消を主張できます。遺言者の判断能力にも関連して、自筆証書遺言、公正証書遺言ともに問題となります。
なお、遺言に際して他人による詐欺・強迫があった場合にも、瑕疵ある意思表示に基づく遺言として、取消の対象になります。

遺言無効確認訴訟

遺言に無効事由があっても、遺産分割協議においてその点がとくに問題とされなかった場合には、相続人全員が納得の上、処理すればよいでしょう。
しかし、遺言の効力に問題がある場合は、相続人間で鋭く対立することが通常です。明らかな方式違反(署名押印がない等)でない限り、無効事由があれば自動的に遺言が白紙に戻るというわけではありません。当該遺言を行った者が亡くなっていることから、裁判所において遺言の効力を確定してもらう必要があります。

(調停前置主義)

遺言無効確認事件は、家庭に関する事項で、家事調停の対象になります。このような事件については、訴えを提起する前に家庭裁判所に家事調停を申し立てる必要があります(家事事件手続法257条1項)。

(民事訴訟)

遺言無効確認調停で解決を得られなかった場合には、地方裁判所に遺言無効確認訴訟を提起することになります。
もっとも、当初から合意の見込みがないときは、実務では、調停を経ずに始めから訴訟を提起することもあります。
遺言の執行が既に終わっている場合には、遺言無効確認と併せて、不動産の抹消登記請求や金銭の不当利得返還請求も行います。

まとめ

家族のことを想って遺言をするなら、その効力に問題を残さないようにすべきです。万が一にも遺言の効力が失われないようにするには、やはり法律の専門家に相談するのが賢明といえます。
また、遺言の有効性を争う場合にはどのような証拠が必要か、これらをいかに効果的に主張するか等についても、弁護士にご相談ください。

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