預金の引き出し | 千葉県船橋市の相続の経験豊富な弁護士

預金の引き出し

預金の引き出し

人の死は突然やってきます。
人が亡くなって相続が開始されると、相続人は、遺産の中でも預貯金、不動産をどうすべきかをまず考えます。
このうち、預貯金については、金融機関に死亡の事実を届け出ると、預貯金が凍結され、原則、相続人全員の協力がなければ引き出せなくなります。預貯金は不動産と比べて分配しやすく、遺産分割時の調整弁として役立つため、各相続人は個別に引き出すのではなく遺産分割協議の成立を待つべきというのが理由です。

預貯金の凍結と新制度

預貯金が凍結されてしまうと、病院施設代、葬式代、相続税の納付等、不可避な出費の支払いができないおそれがあります。
以前は、最高裁判例上、預貯金債権は遺産分割を経ずに法定相続割合で当然に分割されるとされており、遺産分割成立前に各相続人が直接銀行に請求することが可能でした。しかし、2016年(平成28年)12月の最高裁の判例変更により、預貯金は、遺産分割協議が成立しないと払い戻しができなくなりました。
この判例変更に対応し、新制度が創設され、2019年7月1日から、以下の条件のもとで預貯金を引き出せるようになりました。

①遺産分割前における預貯金債権の行使

相続開始時の預貯金債権額×1/3×当該払戻しを求める共同相続人の法定相続分
ただし、同一の金融機関に対して払戻しができる金額は、150万円までです。
なお、これについては、新法施行前(2019年7月1日以前)に開始した相続に関し、新法施行後に預貯金債権が行使される場合にも適用されます。

②預貯金債権の仮分割の仮処分手続き

家庭裁判所に申し立てることにより、遺産分割の調停または審判の事件が係属していることを要件として、相続債務の弁済、相続人の生活の支弁その他の事情により預貯金債権を行使する必要がある場合に限り、上限額なしに預貯金債権の全部または一部を仮に取得できることになります。

預金の使い込み

上記のような被相続人の不可避な費用のためではなく、財産管理を任された相続人の一部が自己の利益のために預金を引き出して使い込み、後日、他の相続人との間でトラブルになるというケースが増えています。

相続開始前の使い込み

被相続人に無断で預金を引き出したことになり、被相続人は、生前に不当利得返還請求及び不法行為に基づく損害賠償請求ができます。被相続人の死亡後、相続人はこの権利を相続することになります。

相続開始後の使い込み

上記のとおり死亡届が出されると預貯金は凍結されるため、相続人の中には、しばらく死亡の届出をせずに、キャッシュカードを利用し勝手に預貯金を引き出すケースがあります。
本来、相続開始により預金は一旦、相続人全員のものになります。これを無断で引き出した場合は、その者の相続分を超える額について、他の相続人は不当利得返還請求及び不法行為に基づく損害賠償請求ができます。

返還に向けての手続き

まずは、使い込みに費消された金額を遺産に加えた上で、相続人全員で遺産分割協議を行うことが原則です。
しかし、使い込んだ者と使い込まれた者が正直、かつ、穏やかに話し合うことは難しく、通常は家庭裁判所が介在する遺産分割調停を申し立てることになります。
この時、注意しなければならないのが、遺産の範囲の確定です。遺産分割は確定した遺産を分け合う手続きであるため、その遺産の範囲自体に争いがある場合には、家庭裁判所は遺産分割調停を受け付けてくれません。
そこで、依頼を受けた弁護士が、弁護士会照会制度等を利用して、金融機関の通帳や取引履歴を徹底的に調査し、さらに、使い込みをした相続人からの聞き取り等により遺産の範囲を確定します。その上で、遺産分割調停の申し立てをします。
この調停内で、無断で使い込んだ相続人がこれを認め、返還の意思がある場合には、遺産分割協議において上記請求権を同時に処理することも可能です。これが困難な場合に、不当利得返還請求訴訟や不法行為に基づく損害賠償請求訴訟を検討することになります。

まとめ

一部の相続人による使い込みが疑われる場合には、早い段階で弁護士に依頼することをお勧めします。どういったアプローチ(協議、調停、訴訟、和解)で相続人間の公平を図っていくべきかを見極めるには、まず、使い込まれた遺産の範囲を明らかにする必要があります。その方法に長けている弁護士が介入することで、以降の使い込みを牽制することもできます。

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