相続放棄 | 千葉県船橋市の相続の経験豊富な弁護士

相続放棄

相続放棄

増える相続放棄

バブル景気がはじけた後も、リーマンショック、そして新型コロナウイルス感染症の発生などにより、経済は大きく変動し、中小企業や個人事業主はその都度余波を受けています。
中小企業においては、金融機関からの借り入れに際して、経営者個人が連帯保証人になっている場合が少なくなく、また、個人事業では、高い保証料を支払って保証協会に保証人になってもらっている場合が多いのが実情です。その事業主が借り入れを残したまま、死亡するケースが年々増えてきています。
また、事業経営とは関係なく、売るに売れない『負動産』の承継を望まない遺族も増えています。
親族関係が希薄になった現代では、遠い親戚の財産は自分に無関係と考える人が増えていることが原因と考えられます。
このような背景のもと、遺族が選択するのが、相続放棄です。その結果、相続放棄は増え続けており、2018年には、10年前の約1.4倍の約21万5000件に増えました。

相続放棄をする前に

[遺産に手を付けることは厳禁]

相続手続きにおいて注意することは、遺産の一部でも「処分」したということになれば、「単純承認」に当たり、相続放棄ができなくなるということです。そうすると、場合によっては、多額の債務を負うことになります。相続財産となる預貯金の一部を引き出して、相続債務を返済した場合、相続放棄ができなくなる可能性が高くなります。

[単純承認となる「処分」とはどのようなものか]

以下のような場合も、相続財産の「処分」とされ、相続放棄ができなくなりますので、くれごれもご注意ください。

  • ①株主として、株主総会で議決権を行使する
  • ②家を取り壊す
  • ③交換価値がある衣服、日用品を売却する
  • ④遺産を放棄するという内容の遺産分割協議をしてしまった

特に、④については、誤解が多いので注意が必要です。遺産分割協議に参加した上で遺産を放棄するというのは、プラスの財産を受け取らないと言っているにすぎず、相続人であることは認めてしまっていることになります。そのため、マイナスの遺産、債務は引き受けることになります。
この場合は、遺産分割協議には参加せず、相続放棄をして相続人とならないことが必要です。

[遺産の確認]

まず、遺産を確認する必要があります。その上で、(相続する・放棄する・限定承認する)を選択することになります。
その確認方法としては、郵便物やメールなどを見て、金融機関や証券会社に預貯金や金融資産の有無、そして、通帳、キャッシュカード、クレジットカード、消費者金融のカードを見て、それぞれの銀行や会社などに預金残高や借入金の有無の照会をします。
また、これらの物が見つからない場合は、全国銀行個人信用情報センター、株式会社日本信用情報機構(JICC)、株式会社シー・アイ・シー(CIC)などの信用情報機関へ照会をかけることもできます。
そして、その中で、明らかに返済不可能な債務が見つかれば、早急に相続放棄の手続きをしなければなりません。

相続放棄手続き

[3か月の熟慮期間]

相続放棄は、限定承認(遺産の範囲内でのみ弁済し、残債務は免除できる制度)と異なり、相続人全員でなく、相続人それぞれの判断で行うことができます。
その期間は、原則として自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月です。
なお、この「熟慮期間」は、裁判所に申し立てをして、伸長することができます。

[家庭裁判所へ申述]

この3か月以内に、被相続人の最後の住所地を管轄とする家庭裁判所へ相続放棄の申述をする必要があります。所定用紙に必要事項を記入のうえ、必要書類を添えて提出します。
手続きが終了すると、裁判所の方から、相続放棄申述受理通知書が送られてきますので、債権者からの問い合わせがあった場合、それを提示すれば、支払を免れることができます。受理証明書を取り寄せることもできます。

[生命保険の死亡保険金は受取人固有のもの]

なお、相続放棄をしたとしても、生命保険の死亡保険金については、遺産ではないため、受け取ることができます。ご安心ください。

相続放棄後に注意すべきこと

相続放棄をした後であっても、以下のようなの場合には単純承認したとみなされ、相続放棄がなかったことになります。

  • ①相続財産の全部、一部を隠す
  • ②相続財産の全部、一部をほしいままに消費する

最後に

故人との関係を踏まえ、熟慮を重ねた上で相続放棄に踏み切ったつもりでも、自らの不注意により単純承認とみなされ、その結果、相続放棄の効果が得られない場合があります。3か月という短い期間の中で、どのような行為ができるのか、あるいは、できないのか、正確な判断は難しいかと思われます。一度専門家に相談されることをお勧めします。
また、故人が亡くなってから3か月を過ぎても、その後に大きい債務があることが判明したような場合、相続放棄が受理される場合があります。このような場合、弁護士を代理人として相続放棄の申述を行うことが望ましいと言えます。このような場合は、早急に弁護士にご相談ください。

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