遺留分侵害額請求をされたときの対応
遺産相続では法律上で決められた法定相続分がありますが、基本的には亡くなった被相続人が、遺言により自由に遺産の分け方を決めることが可能になっています。
しかし、相続人にとって不公平な内容の遺言だった場合、相続人から「遺留分侵害額請求」が来る可能性があります。
遺留分は、亡くなった人の兄弟以外に認められている最低限もらえる財産の割合です。
遺留分を侵害されている相続人は法律上、遺留分権利者といい、遺留分を侵害している相続人は遺留分侵害者といいます。
では、遺留分侵害額請求をされた遺留分侵害者は、どのような対応を取るべきでしょうか。
目次
遺留分を侵害している状態とは
遺留分が侵害されている状態について紹介します。
例えば、夫婦と子ども3人の家庭で夫が死亡し、残された妻と3人の子どもで遺産分割する場合、法定相続分は妻が2分の1、子どもは残りの2分の1を3等分するので6分の1ずつになります。
遺留分は上記からさらに2分の1をかけた分が法定相続分になります。
妻 | 長男 | 次男 | 三男 | |
---|---|---|---|---|
法定相続分 | 2分の1 | 6分の1 | 6分の1 | 6分の1 |
遺留分割合 | 4分の1 | 12分の1 | 12分の1 | 12分の1 |
仮に「遺産をすべて長男に相続させる」という遺言書があった場合、妻と次男・三男は相続財産がなく、遺留分を侵害した状態になります。
遺留分権利者は法律上保障されている最低限の相続分を遺言書が原因で相続できなくなっているので、侵害された分を取り戻すために遺留分侵害額請求権を行使できます。
遺留分侵害額を請求された遺留分侵害者は、遺留分権利者と協議する必要があり無視することはできません。
たとえ「遺留分など侵害していない」「遺言書に書いてあった通りに従って相続しただけ」と思っていても、遺留分侵害額請求をされた以上、何らかの対応が求められることになります。
遺留分侵害額請求をされたときに確認すること
ほかの相続人が行使した遺留分侵害額請求が正当なものかどうか、次の基準を参考に判断壇しましょう。
本当に遺留分権利者かどうか
遺留分が保障されているのは、被相続人の「配偶者」「子」「直系尊属」です。
被相続人の兄弟姉妹は遺留分侵害額請求をすることができません。
また、直系尊属が遺留分権利者になるのは、被相続人の配偶者や子がいない場合に限定されます。
被相続人に配偶者や子がいる場合、直系尊属である親や祖父母は法定相続人になれないため、遺留分侵害額請求はできません。
ほかにも、相続放棄した相続人、相続欠格者、相続廃除を受けた人も遺留分権利者にはなれないので、遺留分侵害額請求はできません。
遺留分侵害額請求の時効を迎えていないか
遺留分侵害額請求には時効が定められています。
相続の開始及び遺留分を侵害している贈与または遺贈があったことを知った日から1年以内に行使しなければ、時効により消滅します。
なお、遺留分を侵害している贈与または遺贈があったことを知らないまま相続開始から10年が経過した場合も除斥期間により時効が完成します。
遺留分侵害額請求が届いた時期と相続が発生した時期を確認し、時効の援用を主張できるかどうか検討すると良いでしょう。
相続人が特別受益を受けていないか
特別受益とは、遺留分権利者が被相続人の生前に受けた贈与のことを言います。
マイホームの購入資金や大学の進学費用などがこれにあたり、遺留分権利者がこのような特別受益を受けていないかどうか確認する必要があります。
先ほどの例で、「すべて長男に相続させる」という遺言書が見つかり遺言書に書かれた通りに相続がなされた場合、妻と子2人には遺留分侵害額請求権が発生します。
仮に相続財産が6000万円の場合、妻は1500万円、子2人にはそれぞれ500万円の遺留分があります。
ところが次男が特別受益により300万円の生前贈与を受けていた場合、特別受益も遺贈に含まれるため、次男の遺留分額は500万円-300万円=200万円になります。
遺留分権利者が、自身が受けた生前贈与を考慮せず遺留分が侵害されていると主張している可能性もあるため、特別受益の有無も確認するべきでしょう。
遺留分侵害額請求をされたときは弁護士に相談を
遺留分侵害額請求は相続人同士の話し合いで解決するのが理想です。
ただ、金額が大きかったり相続人同士が不仲だったりすると、法律上のトラブルになる可能性を想定して内容証明郵便で遺留分侵害者に通知されることがあります。
その後、両者で協議を行い、具体的な遺留分の侵害額や解決金の額を決定します。
多くの場合、遺留分侵害者が、遺留分権利者に対し侵害している分の金額を払って紛争を終了させています。
ただし、遺留分額の計算は複雑で遺留分額をめぐって相続人同士が争うケースも少なくありません。
そのため、遺留分侵害額請求をされた段階で相続に詳しい弁護士に相談した方が良いでしょう。
請求されている遺留分が正当なものかどうか、遺留分額が妥当かどうかも含め紛争解決に尽力いたします。
お気軽にご相談ください。
千葉県は、特に相続問題が発生しやすい土地ではないかと感じています。東京に近い一方で、昔ながらの習慣が残っており、代々続く家を守ろうとする考え方は、現代の相続法と相いれない場面があります。相続問題は、よく言われますが、「我が家に限ってもめるはずがない」と考えていたのに巻き込まれてしまう、というケースが散見されます。いつ発生するか分からない問題です。また、将来のことを考え、遺言などで準備することもできます。西船橋駅を中心とした地域で相続・遺言などの問題にお困りの際には、是非とも一度、藤岡法律事務所までご相談下さい。