「遺言書の書き方には注意!トラブルにつながる遺言書や注意点を解説」 |千葉県船橋市の相続の経験豊富な弁護士

「遺言書の書き方には注意!トラブルにつながる遺言書や注意点を解説」

遺言書の書き方にはルールがあるため、守られていない場合は無効となるおそれがあります。また、家族に配慮がなされていないとトラブルの火種となるため注意が必要です。

ご自身の財産をご家族や大切な人に遺すために「遺言書」を書く方は少なくありません。遺言書があればご家族の間で遺産をめぐるトラブルは避けられることがあります。しかし、遺言書は書き方次第で、大きなトラブルを発生させることがあります。

 そこで、本記事では遺言書の書き方に注目します。トラブルにつながりやすい遺言書や、実際に作成する際の注意点を解説します。

 トラブルにつながる遺言書の特徴|よくある8つの事例を紹介

 相続時のご家族間のトラブルを避けるために作成されることが多い遺言書ですが、書き方によってはトラブルのきっかけになってしまうことがあります。この章ではトラブルにつながる遺言書の特徴について、よくある8つの事例を通して紹介します。

 1.遺言の内容があいまい

 遺言書ではご自身の財産を誰に残すか記載しますが、遺言内容があいまいな場合は効力

が認められなかったり、どの財産を特定していいのかわからずトラブルになることがあります。

 例として、「埼玉県の農地は長男に相続させる」と書いてあっても、埼玉県内のどこのある農地なのか不明瞭のため相続登記手続きが進められません。

「預貯金は長女と次女に相続させる」と書いてあっても、金融機関口座も金額も曖昧で、かえって姉妹でトラブルとなるおそれもあります。

 2.遺言書の形式不備

 遺言書には大きく3つの書式があります。

 ・自筆証書遺言(遺言者が自ら作成)

・公正証書遺言(公証人が作成し、原本は公証役場にて保管)

・秘密証書遺言(遺言内容を秘密にしたまま公証役場で遺言の存在を証明する)

 上記のうち、広く利用されているのは「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」です。自筆証書遺言の場合、ご自身で簡単に作成できる分、日付や押印がなく形式不備となってしまう傾向があります。

 公正証書遺言は公証人が作成し、証人も2名用意するため不備が起きにくい遺言書ですが、証人になれない人が立ち会っていた場合等のケースでは不備となることがあります。

 3.何通も遺言書が見つかった

 遺言書は何通でも作ることができ、複数ある場合は遺言書の形式ではなく「最新版」が効力を持ちます。つまり、古い遺言書ではなく、亡くなる前に作られた最も新しいものです。しかし、日付があいまいで何通も遺言書が見つかると、一体どれを採用すればいいかわからずトラブルになることがあります。

4. 誰かに書かされた可能性がある

 遺言書は自らの意志で作るものですが、誰かに脅された等の理由で作成されてしまうこともあります。誰かが無理に書かせた場合は無効となるため、ご家族間でトラブルとなるおそれがあります。

5.ご家族以外や団体への遺贈が書かれている

 遺言書がない相続では法定相続人が財産を相続するため、内縁関係や団体が遺産をもらうことはできません。しかし、遺言書を使えば法定相続人以外に財産を遺贈することが可能です。

 しかし、遺言書の中身がご家族は全く知らない人(知人や友人等)への遺贈であったり、自治体やNPO等への遺贈だった場合、ご家族は納得できずトラブルに発展することがあります。また、遺贈の内容によっては法定相続人の「遺留分」(※)を侵害している可能性があるため、「遺留分侵害額請求」に発展するおそれもあります。

 (※)遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人が受け取れる最低限の遺産割合のことです。

6.特定の人に偏った遺言内容だった

 多数の相続人がいる相続は遺産分割協議が難航するおそれがあるため、遺言書を残してスムーズな遺産継承を目指す相続対策を行うことがあります。しかし、特定の人が財産を受け取る内容が記載されていた場合、財産をもらえなかったご家族が遺留分の侵害を主張したり、遺言書の無効を求める可能性があります。

 たとえば、生前に親と同居していた長男がいるにもかかわらず、同居していた不動産を別居していた次男に相続させるという遺言内容だった場合、なぜ生前に懸命に尽くしたのに不動産がもらえなかったのか、理由がわからない長男は次男と争う可能性があります。

 また、特定の人が高額の財産を相続する場合、高額の相続税を納付せざるを得ない場合があります。相続税は原則として現金で納付する必要があり「相続税を支払えない」というトラブルが起きることもあります。

7.認知症等の発症後に書かれている

 遺言書の作成時には、遺言者の意思能力が欠かせません。そのため、認知症等の発症後に作成された遺言書は、遺言者の意思能力が低下していると考えられるため、効力の有無をめぐって争いが起きる可能性があります。

 認知症を発症すると、すぐさま遺言書が書けなくなるわけではありませんが注意が必要です。

8.介護や扶養をしたご家族へ配慮がなかった

 近年は高齢化社会が進み、親や兄弟姉妹の介護に従事するご家族も増加しています。しかし、遺言書に介護や扶養で貢献してくれたご家族に財産を遺すのではなく、別の人に財産を渡す旨が記載されていたら、遺言内容について無効を求めるリスクが高くなります。

 遺言書のトラブルが起きるとどうなる?

 遺言書の書き方が思わぬトラブルを招いてしまったら、一体どのような事態に直面するのでしょうか。この章ではトラブル後に起こり得る事態を解説します。

遺留分をめぐって争う

 遺言書の書き方によっては、財産をもらえなかった法定相続人が遺留分を侵害されてしまうため、もらえるはずの遺留分を取得するために請求を行う可能性があります。遺留分の請求方法は以下です。

 ・侵害している相手に、直接支払いを求める

・内容証明郵便で通知し、支払いを求める

・遺留分侵害額請求調停、訴訟を行う

 遺留分を侵害している側が内縁関係の妻・夫であったり、遺言者の知人や友人だった場合は遺留分の支払いに関する話し合いを持ちにくく、解決まで長期化するケースもあります。

遺言無効確認訴訟が起きる

 遺言内容が不明瞭だったり、無理に書かせている可能性がある場合は、遺言が無効であることを確認したい人が裁判所に対して「遺言無効確認訴訟」を起こす可能性があります。

無効であると裁判所が認めた場合、その後遺産分割協議を相続人全員で行う必要があり、遺産をめぐる手続きが「長期化」しやすくなります。

次の相続でもトラブルになる

 遺言書だけではなく、相続をめぐる多くのトラブルは長期化しやすいため、揉めているあいだに次の相続が発生してしまうことがあります。すると、先の相続問題が片付いていないため、次の相続手続きもスムーズに進まずトラブルに発展しやすくなります。

 ご家族が疎遠になる

 遺言書をめぐって1度でも対立してしまうと、ご家族が衝突してしまうため「疎遠」になってしまうことがあります。亡くなった遺言者の意志に関係なく、遺言の記載内容によっては「親から財産をもらえず苦しい」「もう二度と関わりたくない」といった負の感情を、ご家族が抱いてしまうことがあります。

本来ならご家族が仲良く相続手続きを進めることが理想ですが、1通の遺言書がご家族に重いトラブルを残してしまうことがあるのです。

トラブルを避ける遺言書を作ろう|作成時の注意点

 これから遺言書の作成を検討している場合、ここまで紹介した書き方におけるトラブルを避けて、安全な遺言書を作成することがおすすめです。そこで、この章では遺言書作成時の注意点を解説します。

1.守るべき要件をしっかり押さえる

 遺言書の中でも自筆証書遺言の場合は「形式不備」が多く、効力の無効や記載の確認に時間を要することがあります。そこで、自筆証書遺言書を作る場合は守るべき要件をあらかじめしっかりと押さえておきましょう。

 ■自筆証書遺言書で守るべき3つの要件

①遺言書の全文・作成日時・氏名はすべて「自書」し、押印を忘れない

②財産目録はパソコンでの作成も可能だが、すべてのページに署名と押印をする

③訂正や追加がある場合は、必ず行った箇所をわかるように記載し、訂正・追加箇所に押印をする

 この3つの要件は民法で定められており、守られていない場合は遺言書が無効になってしまいます。自書で作成が難しい場合は「公正証書遺言」であれば、公証人が記述するため遺言書を安全に作成できます。

詳しくは以下をご一読ください。

 参考URL 東京法務局 遺言書を作成するときの注意点

2.法定相続人以外へ遺贈する場合の注意点

 遺言書があれば、内縁関係の妻や夫、同性パートナー、知人や友人はもちろん、地方公共団体やNPO等に財産を遺すことができます。

 しかし、法定相続人がいる中で第三者へ遺贈する場合は、以下の点に考慮が必要です。

 ・遺留分に考慮はあるか

・第三者が遺産をめぐる相続トラブルに巻き込まれる可能性はないか

・債務がある場合、債務を相続しないように考慮された遺言書か

・相続税が高くなる可能性がある

 全ての財産を第三者に遺贈する場合、法定相続人は遺留分を侵害されてしまいます。もしも無用なトラブルを避けたいなら、遺留分に考慮がある遺言書にするか、弁護士等の専門家を遺言執行者に指定し、円滑な相続手続きをサポートしてもらうことが大切です。

 また、遺言者に債務がある場合は遺贈方法にも注意が必要です。遺言書の書き方として「包括遺贈」を選択された場合、受贈者(遺贈を受け取る人)は債務も含めて財産を受け取る必要があります。債務を除いて財産を渡したい場合は、特定の財産だけを遺贈する「特定遺贈」を選択する必要があります。

 また、血族関係ではない個人への遺贈は相続税が発生すると2割加算の対象となるため。重い課税に悩まされるおそれがあります。(※)

 第三者への遺贈はトラブルに発展しやすいため、あらかじめ弁護士や司法書士等の専門家に相談した上で、遺言書を作成することが望ましいでしょう。

(※)地方公共団体等への遺贈は相続税が課税されません。

3.元気なうちに作成し、安全に保管する

 遺言書は年齢を重ねてから作成を行う人が多いですが、認知症等のリスクを考えると「元気」なうちから作成を行っておくことが大切です。また、紛失や汚損、改ざん等のトラブルを避けるためにも、作成後は安全に保管するようにしましょう。自筆証書遺言と公正証書遺言では、それぞれ保管方法が異なります。

 ・自筆証書遺言の保管方法

ご自身で行うか法務局による自筆証書遺言書保管制度を活用する

 ・公正証書遺言の保管方法

原本は公証役場にて保管、正本が遺言者に手渡されるためご自身で保管。原本・正本と比較すると効力はないが、謄本をもらうこともできる

4.必要に応じて遺言執行者を指定しておく

 事業継承や相続人が多いケース等、トラブルを避けて遺言内容を確実に遂行してほしい場合は、あらかじめ遺言執行者を指定しておくことがおすすめです。遺言執行者とは、遺言に書かれた内容を遂行する人を意味し、以下の人を除いて就任することができます。

 ■遺言執行者になれない人

・遺言の効力が発生した時点で未成年者の人

・遺言の効力が発生した時点で破産者の人

 複雑な手続きを要する遺言内容の場合は、弁護士や司法書士等の法的知識がある専門家をあらかじめ指定しましょう。遺言執行者は相続人であっても就任できますが、家族の間で意見が衝突してしまう等のトラブルを避けたい場合は、第三者を指定することがおすすめです。なお、一般的な遺言書であれば遺言執行者が必ず必要なわけではありません。

引用 民法1006

遺言者は、1人又は数人の遺言執行者を指定することができる

 なお、あまり多いケースではないですが、遺言執行者が必ず必要な遺言内容もあるため注意しましょう。指定していない場合は、相続人が裁判所に対して遺言執行者選任の申立てをする必要があります。

 ■遺言執行者が必ず必要なケース

・子の認知を行う

・相続人の廃除、もしくは廃除の取り消しをおこなう

 参考URL 裁判所 遺言執行者の選任 

遺言書作りは専門家への相談から始めましょう

 遺言書には書式だけではなく、押さえておくべき注意点が多いため、まずは専門家に相談の上で作成がおすすめです。特に相続トラブルの回避を目指して遺言書を作りたい場合は、新たな火種を生まないように十分に配慮を尽くした遺言書を残せるようにしましょう。

 専門家に相談すると、遺言書の書き方だけではなく、遺言執行に関することや遺贈時の注意点、家族にメッセージを残せる付言事項の使い方等のアドバイスも受けられます。すでに作成された人であっても、最新の遺言書へ作り直すことも可能です。

まとめ 

 本記事では遺言書の書き方について、トラブルなりやすい遺言書や注意点を中心に解説しました。遺言書は安全に作成すれば、多くの相続トラブルを回避できるものですが、その一方で誤った書き方をしてしまうと無効になってしまうおそれもあります。家族への配慮も尽くした遺言書を作るためにも、弁護士等の専門家へまずはご相談ください。

 

この記事の監修者

藤岡 隆夫弁護士 (千葉県弁護士会所属所属)

FUJIOKA TAKAO

千葉県は、特に相続問題が発生しやすい土地ではないかと感じています。東京に近い一方で、昔ながらの習慣が残っており、代々続く家を守ろうとする考え方は、現代の相続法と相いれない場面があります。相続問題は、よく言われますが、「我が家に限ってもめるはずがない」と考えていたのに巻き込まれてしまう、というケースが散見されます。いつ発生するか分からない問題です。また、将来のことを考え、遺言などで準備することもできます。西船橋駅を中心とした地域で相続・遺言などの問題にお困りの際には、是非とも一度、藤岡法律事務所までご相談下さい。

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