不動産共有名義のメリット・デメリットと注意点を徹底解説! |千葉県船橋市の相続の経験豊富な弁護士

不動産共有名義のメリット・デメリットと注意点を徹底解説!

離婚や相続時には、不動産の取り扱いでトラブルが発生することがあります。中でも「不動産を共有名義」にしていたことが理由となるケースは少なくありません。このような事態を避けるには「不動産共有名義」に関する基礎知識を理解しておくことが大切です。

今回は、不動産共有名義について解説します。今回の記事を読むと、不動産共有名義のメリット・デメリットだけでなく不動産共有名義の注意点と解消方法が分かるので気になる方は、ぜひご一読ください。

不動産の共有名義に関する基礎知識

所有する不動産を自分の資産だと証明するには、不動産登記が必要です。不動産登記がされていなければ、問題が発生したとき、基本的に対抗することができません。それほど不動産登記は重要になります。

では、共有名義とはどういった状態なのでしょうか?まずは不動産の共有名義に関する基礎知識を見ていきましょう。

不動産共有名義の概要

不動産共有名義とは、複数名で不動産を共同所有している状態のことです。先程も説明した通り、不動産を所有した場合は登記が必要になります。これは、共有名義でも同じです。そのため、共有名義の場合は不動産を取得したときの出資額の割合に応じた所有持分によって登記が行われます。

より理解を深めるために、まずは共有名義に関係する言葉を見ていきましょう。

・共有者

不動産を共有している者を指す言葉です。

・共有持分

不動産所有権の割合と、割合に応じた権利のことを指します。2人が同額出資の共有名義である場合、基本的にそれぞれの共有持分は1/2になります。

・持合い割合

1つの不動産を複数名で所有しているときの所有権の割合です。

「共有持分」と「持合い割合」の違いに悩まれる方もいらっしゃいます。そのような場合は、不動産を複数の人で所有した際の所有比率を示すものが「共有持分」で、共有持分の割合のことが「持合い割合」になると理解しておきましょう。

なお、不動産の所有者が1人の場合は単独名義と呼びます。

事例で解説する不動産の共有名義

1つの不動産を複数人で所有している状態が「共有名義」であることが分かりました。しかし、中には具体的な事例が思い浮かばない方もいらっしゃるかもしれません。

そこで、ここからは代表的な共有名義の事例を紹介します。

・ケース1:夫婦で1つの不動産を共有する場合

夫婦で家を購入した場合、住宅ローンは2人で支払っていくことになるので、基本的に共有名義になります。

・ケース2:不動産を相続した場合

相続人が複数人いる状態で不動産を相続すると、共有名義になることがあります。

相続人が4人いる状態で平等に相続すると、それぞれの持ち分は1/4になります。平等に相続するという意味では問題ありませんが、売却を検討している場合は、共有者同士の意見がまとまらずにトラブルに発展することがあるので、相続時にはこの点を理解しておかなければいけません。

また、相続時には遺族が認識していなかった土地が相続されることもあります。このような場合、税金の支払いや管理を誰が行うのかを明確にしておくことで、トラブルが起こりにくい環境を作ることが可能です。

・ケース3:他人と共有する場合

配偶者や親族で不動産を共有する以外にも、他人と共有するケースも考えられます。友人や知人など関係性が深い相手と共有する場合もあるでしょう。

しかし、場合によっては全くの第三者と共有状態になることがあります。一例として考えられるのが、共有者が自分の持ち分を売却した場合です。

所有者の一人が、自分の持ち分を売却すれば購入者が共有名義に加わります。不動産の共有名義には、このような事態が起こり得ることも覚えておきましょう。

不動産共有名義のメリット・デメリット

不動産共有名義には、メリットとデメリットが存在します。ここからは、不動産共有名義のメリットとデメリットを見ていきましょう。

大きなメリットは高額なローンが組みやすいことと、税金の特例措置への優遇、節税効果が期待できることです。2つのメリットを詳しく見ていきましょう。

不動産を共有名義にすることを前提とすると、複数の人がローン組むことになるので高額なローンが組みやすくなります。夫婦の場合は、お互いに安定した収入があればペアローンの活用も可能です。また、共有名義の場合はそれぞれが住宅ローン控除を受けることができるため、夫婦が共有名義の場合は家計の節約につながります。

さらに、共有名義の不動産を売却すると各名義人が税金控除を受けられるのも見逃せないポイントです。夫婦2人の共有名義となっている居住用財産を売却すると、譲渡所得から最高で6,000万円を控除できる特例を受けられる可能性があります。単独名義の場合は、上限は3,000万円です。この違いは大きなメリットといえるでしょう。

では、続いて不動産共有名義のデメリットを見ていきます。

不動産共有名義の代表的なデメリットは活用に制限がかかることと、トラブルが起こるリスクがあることです。

共有名義の場合、不動産全体を売却するには共有者全員の同意が必要になります。つまり、共有者のうち1人でも反対すれば売却できないということです。もちろん、自分の持分については自由に売却することができますが、他に所有者がいる不動産の売買は簡単ではありません。

また、管理行為や軽微な変更を独断で行うことができないのもデメリットです。管理行為や軽微な変更には、過半数の決定が必要になります。そういう意味では不動産の活用において制限がかかるのです。

さらに、トラブルが起こるリスクも見逃せないデメリットです。共有者間でトラブルが起こり裁判に発展することも珍しくありません。少しでもリスクを軽減するために、活用方法や税金、維持管理費の負担割合などは共有者全員で話し合って事前に決めておきましょう。

不動産共有名義の注意点とは?

不動産を共有名義にする場合、注意しなければいけないことがあります。それが、想定しなかった税金が発生するリスクです。

夫婦で共有名義の不動産を持っている状態で、妻が仕事を辞めて収入がなくなると夫がローンを支払うことになります。しかし、この場合「妻から夫への贈与」が行われたとみなされることがあるのです。その結果、贈与された不動産が課税対象となり贈与税が発生することがあるので注意しなければいけません。

反対に単独名義だった不動産を夫婦の共有名義にした場合も課税対象になることがあります。

このように、共有名義には想定しなかった税金が発生するケースがあることは覚えておきましょう。

また、相続時には相続税が発生するため、こちらの支払いについても考えておく必要があります。持分に応じた相続税を支払うのであれば、予め金額を算出して準備しておきましょう。

共有名義の解消方法

状況によっては、不動産の共有名義を解消したいと考える方もいらっしゃいます。では、共有名義は、どのような手続きによって解消すればいいのでしょうか?ここからは、共有名義の解消方法や具体的な流れについて解説します。

代表的な手続きは下記の5つです。

1.単独名義に変更する

1つ目の方法が単独名義への変更です。不動産の共有名義は、共有者全員の合意があれば単独名義に変更することができます。ただし、無償で持分を受け取った場合は、贈与とみなされ課税の対象となることで贈与税が発生することもあるので注意してください。

2.共有者全員の同意を得て不動産を売却する

共有者全員の合意があれば、不動産を売却することが可能です。売却すれば持分がなくなるため、共有名義も解消されます。なお、売却前には後々のトラブルを防ぐためにも売却代金は持分に応じて分けるといった取り決めを行っておきましょう。

3.共有者同士で持分を売買する

持分を共有者同士で売買することも可能です。共有者に売却することで、共有名義を解消することができます。ただし、売却価格には注意しなければいけません。なぜなら、売却価格が相場と比較して極端に安い場合は贈与とみなされる可能性もあるからです。

売却価格によって、課税の対象になることがあるので、売却価格は相場価格を参考にして判断しましょう。

4.自身の持分を第三者へ売却する

自分の持分であれば、共有者以外に売却することが可能です。持分の売却は、共有者の合意が必要ないので1人で判断できます。ただし、持分だけの売却に応じてくれる買手は見つかりにくく、時間がかかるうえに相場価格での売却が難しいのが現実です。

5.共有物分割請求によって解消する

すべての共有者は、共有状態の解消を求める権利を持ちます。そのため、共有者間で話が進まない場合は、共有物分割請求訴訟を検討するのも方法です。共有物分割請求とは、名前の通り、土地を含む不動産の分割を求める請求のことを指します。代表的な分割の方法は下記の3つです。

・不動産を分筆してそれぞれを単独の所有とする現物分割

・対象の土地を売却して代金を分け合う換価分割

・他の共有者に対して金銭を支払うことで単独名義に切り替える賠償分割

ただし、共有者が応じない場合は解決までに時間がかかるうえで費用もかかります。しかも、希望通りの結果になるとは限りません。そのため、共有物分割請求訴訟は最終手段として覚えておきましょう。

不動産共有名義の押さえておくべきポイント

不動産を複数の人で所有する場合は、いくつか押さえておかなければいけないポイントがあります。なぜなら、不動産の取り扱いには共有者の状態も関係してくるからです。また、税金に関することも理解しておかなければいけません。ここからは、不動産共有名義の押さえておくべきポイントについて詳しく解説します。

共有者の意思能力がなくなった場合

共有名義の不動産を所有する方は、共有者の意思能力がなくなった場合の対応について知っておかなければいけません。なぜなら、意思能力がないと判断されると土地を含む不動産売却ができなくなるからです。これは、認知症などによって意思能力が失われた場合も同じです。

ただし、後見人制度を活用すると不動産売却は可能です。後見人制度とは裁判所が選定した後見人が本人に代わって法律行為を行う制度で、保佐人や補助人も含まれます。

ここで注意しなければいけないのが後見人の役割は不動産売却後も続くということです。共有名義の土地や不動産を売却するために後見人になったのだから、不動産売却後は後見人である必要がないと考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、後見人としての役割は土地や不動産売却後も本人が亡くなるまで続くため、大きな負担になる可能性があります。後見人になるのであれば、この点を理解したうえでの判断が必要です。

共有者が自己破産した場合

共有者が自己破産しても、他の共有者の持分に影響を与えることはありません。ただし、影響を受けないのは各自の持分だけです。自己破産した共有者の持分は競売にかけられ落札される可能性があります。落札された場合は、落札者が新たに共有者に加わることになるので、管理が難しくなります。

なお、共有者が自己破産した場合は競売にかけられる前に共有者に買取が提案されることも珍しくありません。この時、買取に応じれば他人が共有名義に加わることを防ぐことができます。

共有不動産の税金について

土地を含む不動産の所有者には固定資産税や都市計画税といった税金が課せられます。共有名義の場合、これらの税金は共有者全員が連帯して義務を負うことになるのです。ただし、役所が持分に応じた納付書を送ることはありません。

基本的には代表者のもとに納付書が届けられます。そのため、税金の支払い方法や割合は事前に話し合って決めておかなければいけません。なお、納付書の送付先を変更したい場合は共有者全員の同意が必要になるので、話し合いの際に代表者を決めておくことも忘れないようにしましょう。

共有名義を放置するリスク

相続により、共有名義の不動産を所有している方は少なくありません。しかし、この状態を放置するのは避けた方がいいでしょう。なぜなら、共有者が死亡すると共有持分は相続人に引き継がれていくからです。つまり、共有名義を放置し続けると共有者が増え続けていく可能性があるのです。

関わる人数が増えれば増えるほど、まとめることは簡単ではなくなります。そのため、処分したい場合は早めの対応を心がけてください。

なお、相続人がいない場合は共有者に帰属されることになります。2人で共有している状態で1人が亡くなり、相続人がいなければ共有が解消され単独で所有することになるので覚えておきましょう。

まとめ

今回の記事では、不動産の共有名義について解説してきました。

共有名義の不動産は、自分の意思だけで簡単に処分することができません。なぜなら、共有者全員の同意が必要になるからです。もちろん、自分の持ち分を処分することはできます。しかし、その場合は購入者が見つかりにくいうえに相場よりも安い価格での売却になってしまう可能性が高くなります。

また、共有名義の不動産を処分するときはトラブルに発展する可能性もあるので処分方法は慎重に判断しなければいけません。このような時、大切になるのが専門家への相談です。専門家に相談すると費用がかかります。しかし、専門家の意見を取り入れることでトラブルを未然に防ぎながら、冷静に対応していくことができるのは大きなメリットです。もちろん、実際の手続きの際にはサポートを受けることもできます。

共有名義の不動産を処分したい場合や、共有名義を解消したい場合は、まずは頼れる専門家への依頼や相談を検討しましょう。

この記事の監修者

藤岡 隆夫弁護士 (千葉県弁護士会所属所属)

FUJIOKA TAKAO

千葉県は、特に相続問題が発生しやすい土地ではないかと感じています。東京に近い一方で、昔ながらの習慣が残っており、代々続く家を守ろうとする考え方は、現代の相続法と相いれない場面があります。相続問題は、よく言われますが、「我が家に限ってもめるはずがない」と考えていたのに巻き込まれてしまう、というケースが散見されます。いつ発生するか分からない問題です。また、将来のことを考え、遺言などで準備することもできます。西船橋駅を中心とした地域で相続・遺言などの問題にお困りの際には、是非とも一度、藤岡法律事務所までご相談下さい。

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