遺産分割1 遺産分割で兄弟姉妹・甥姪が相続人となる場合 |千葉県船橋市の相続の経験豊富な弁護士

遺産分割1 遺産分割で兄弟姉妹・甥姪が相続人となる場合

被相続人の兄弟姉妹・甥姪が相続人になるのは、

  • 1、被相続人(亡くなった方)に子ども、孫等の直系卑属がいないこと。
  • 2、被相続人の両親、祖父母などの直系尊属が全員他界していること。

この二つの条件がそろった場合です。
考えられるケースとしては、被相続人が生涯独身だった場合や結婚していても子どもがいない場合です。
生涯未婚率の上昇や少子化の影響により、こうしたケースは今後増えてくると見られています。
 

兄弟姉妹が相続人になる場合は揉めやすい

被相続人の兄弟姉妹が相続人となるケースだと、相続トラブルが生じやすくなります。
いくつかの事例を想定してみてみましょう。
 

事例1

被相続人は生涯独身だった。
兄弟姉妹とは疎遠になっていて、葬式すら顔を出さないような場合。
 
このような場合は、被相続人の葬式をどうするのか、遺骨はどうするのかと言った問題から生じてしまいます。
引き取り手がいない場合は、自治体が無縁仏として埋葬することになるでしょう。
そして、被相続人の遺産は、すべて兄弟姉妹が相続することになります。
ここで注意したいのは、被相続人の生前の負債などのマイナスの遺産も相続してしまうことです。
そのため、兄弟姉妹としては、被相続人が生前に多額の負債を抱えて債務超過になっていたことを知っている場合は、速やかに相続放棄などの手続きを取る必要があります。
相続放棄は、相続開始から3か月以内に家庭裁判所において手続きを行わなければなりません。
被相続人と疎遠の場合は、被相続人の遺産がどれだけあるのか分かりにくいため、残された兄弟姉妹にとって悩みの種となりやすいようです。
 

事例2

被相続人には配偶者がいるが、兄弟姉妹との仲が良くない場合。
 
このような場合は、相続に関しては、配偶者と兄弟姉妹が法定相続人となります。
配偶者と兄弟姉妹の法定相続分は、
 

配偶者の相続分が4分の3
兄弟姉妹の相続分が4分の1

 
となります。
しかし、配偶者と兄弟姉妹との仲が良くない場合は、配偶者は遺産分割を拒否する一方、兄弟姉妹が遺産の取り分を主張するなどしてトラブルになりがちです。
配偶者がすべての遺産を相続するにしても、兄弟姉妹に相続放棄等を求める必要があり、協力を得られないと、相続手続きが困難になります。
 

事例3

被相続人には配偶者がいる。
また、被相続人の兄弟姉妹がすでに他界していた場合。
 
このような場合は、相続に関しては、配偶者と兄弟姉妹の子が法定相続人となります。
兄弟姉妹の子とは、被相続人から見て甥や姪に当たる人たちです。
甥や姪だと既に疎遠になっていることも珍しくないでしょう。
その様な場合でも、甥や姪にも法定相続分が認められており、
 

配偶者の相続分が4分の3
甥や姪の相続分が4分の1

 
といった形になります。
配偶者としては、疎遠な甥や姪に被相続人の遺産を渡したくないと思う一方、甥や姪としてはもらえるものはもらっておけとばかりに法定相続分を請求して来るという形で、トラブルになりがちです。
また、配偶者がすべての遺産を相続するにしても、甥や姪に相続放棄等を求める必要があり、協力を得られないと、相続手続きが困難になります。
 

遺産が少額でもトラブルは生じる

被相続人の遺産はほとんどないから、まさか、兄弟姉妹が遺産の取り分を主張してくることはないだろうと考える方もいらっしゃるかもしれません。
銀行預金などは少なくても、残された配偶者が住んでいる家が被相続人名義であれば厄介なことになります。
兄弟姉妹としては、その家を売却してお金に変えた上で、相続分相当額の金銭を寄こせと主張してくるかもしれません。
このような場合は、配偶者としては、配偶者居住権を主張して、家に住み続けることもできますが、兄弟姉妹とのトラブルの根本的な解消にはなりません。
 
ただ、兄弟姉妹が相続人になるケースでは、被相続人が生前に簡単な対策を講じておけば、こうしたトラブルを避けることができます。
 

兄弟姉妹には遺留分がないことに注目

兄弟姉妹が絡む相続で注目したいことは、兄弟姉妹(甥、姪も含む)には遺留分がないことです。
遺留分とは、法定相続人に認められている最低限の取り分です。
法定相続人の遺留分を侵害する形の遺言書が書き残された場合は、遺留分を侵害された法定相続人が、余分に遺産を取得した人に対して、遺留分侵害額請求権として、金銭的な請求を行うことができます。
この遺留分が認められているのは、被相続人の配偶者、子、孫を含む直系卑属、父母などの直系尊属だけです。
 
兄弟姉妹には、遺留分が認められていません。
 
これは、被相続人が兄弟姉妹の相続分を無しとする旨の遺言を書き残していたとしても、兄弟姉妹としては遺留分を主張できない。
その遺言に文句を言うことができないことを意味しています。
 

兄弟姉妹が相続人となる場合は遺言書を書き残そう

兄弟姉妹が相続人となる事例では、被相続人の方が生前に簡単な遺言書を書き残すことにより、大半の相続トラブルを防ぐことができます。
 

事例1の場合

被相続人の方が遺産を渡したい相手に対して、遺贈する旨の遺言を書き、遺言執行者を指定して遺言書を預けておけば、その通りにしてもらうことができます。
遺言執行者が専門家などであれば、死後事務委任契約などを締結することで、葬式や埋葬の手配もしてもらえるでしょう。
これだけの手配をしておけば疎遠になった兄弟姉妹に迷惑をかけることはありません。
 

事例2、事例3の場合

このような事例では、残された配偶者に全遺産を相続させたいと考える方も多いと思います。
その場合は、「私は妻甲野花子(夫甲野太郎)にすべての遺産を相続させる。」という趣旨の簡単な自筆証書遺言を書き残すだけで足ります。
これにより残された配偶者が全遺産を相続することになりますが、遺留分のない兄弟姉妹は、遺留分の主張やその他の文句を言うことはできません。
 
なお、自筆証書遺言はそのままでは、相続手続きに使うことができません。
相続開始後に自筆証書遺言を家庭裁判所に提出して検認してもらうという手続きを経る必要があります。
残された配偶者にこの手間をかけさせないためには、法務局が行っている自筆証書遺言書保管制度を利用しましょう。
自筆証書遺言書を書いた後で、法務局に預かってもらう公的サービスですが、この制度を利用していれば、家庭裁判所の検認を受ける必要がありません。
自筆証書遺言書の存在が明確になるため、兄弟姉妹から「その遺言書は無効だろう」とか「あなたが偽造したものではないのか」と言ったような文句を言われることもほとんどありません。
 

まとめ

相続において、被相続人の兄弟姉妹が相続人になるケースは、今後、増えると思います。
ただ、兄弟姉妹には遺留分がないため、被相続人の方があらかじめ、自筆証書遺言を書き残せば、大半の相続トラブルは、回避できます。
兄弟姉妹が相続人になるため、相続トラブルになりそうだと感じている方は、早めに弁護士にご相談ください。

この記事の監修者

藤岡 隆夫弁護士 (千葉県弁護士会所属所属)

FUJIOKA TAKAO

千葉県は、特に相続問題が発生しやすい土地ではないかと感じています。東京に近い一方で、昔ながらの習慣が残っており、代々続く家を守ろうとする考え方は、現代の相続法と相いれない場面があります。相続問題は、よく言われますが、「我が家に限ってもめるはずがない」と考えていたのに巻き込まれてしまう、というケースが散見されます。いつ発生するか分からない問題です。また、将来のことを考え、遺言などで準備することもできます。西船橋駅を中心とした地域で相続・遺言などの問題にお困りの際には、是非とも一度、藤岡法律事務所までご相談下さい。

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