遺留分を侵害している遺言は無効? |千葉県船橋市の相続の経験豊富な弁護士

遺留分を侵害している遺言は無効?

兄弟姉妹以外の法定相続人は、法律上最低限度の遺産の取得割合が認められていて、これを「遺留分」といいます。
仮に「私の財産はすべて長男に相続させる」という遺言があった場合、ほかの相続人は遺留分を侵害されている状態になります。
相続人にとって不公平な遺言書は法的効力があるのでしょうか。
 

遺留分を侵害している部分以外は問題なく有効

確かに、遺留分を侵害した遺言書は相続争いもとになりかねないため、無効にして相続人同士の話し合いで決めた方がいいと思われるかもしれません。
しかし、遺留分を侵害している遺言書がただちに無効になるとは限らないのです。
遺言書に正確な日付や署名捺印など、法的な遺言書として認められる要件を満たしている場合は正式な遺言書として成立します。
例外的に、遺言書が詐欺や強迫によって書かれたものだったり、第三者の介入によって書かれたりしたものと判断されれば無効となることもあります。
 

遺留分を侵害している部分は実質的に無効となる可能性がある理由

遺留分は、一定の相続人に必ず遺産を受け取れる権利が保障されている最低部分のことをいいます。
被相続人の配偶者と子、直系尊属に認められており、兄弟姉妹には認められていません。
遺言に遺留分を侵害している内容の記載があった場合、遺留分権利者は、遺留分侵害額請求をすることにより、遺言に従えば得ることができなかった部分についても、遺産から金銭的利益を受け取ることができます。
よって、遺留分の範囲において、遺言の効力は実質的に無効になります。
基本的には法律が定める法定相続分より、被相続人が遺言で指定した遺産分割方法が優先されますが、遺言で遺留分が侵害されている場合は遺言より遺留分の方が優先されます。
遺言書を作成した人は、自分の財産の分け方を自由に指定できるのが原則ですが、以上のように、遺留分の制限を受けます。
そのため、遺言書を作成する人は自分の死後、相続が開始したときに相続人同士でトラブルにならないよう、遺留分に配慮した遺言書を作成するのが望ましいと言えます。
 

遺言書が無効になるケースとは

遺言書が全体として無効となるケースとして次のような例があります。
 

  • ・記載内容が不明瞭(「遺産は全部自分のもの」など)
  • ・方式の不備(日付や捺印、自署がない、「平成33年2月30日」などの不正確な日付などもこれに該当します)
  • ・認知症を患っていた等の事情により、遺言書作成日に、被相続人に遺言作成能力がなかった場合
  • ・第三者による詐欺や強迫、錯誤によって書かれた可能性(特定の相続人に有利になるような内容を書くように仕向けられていないかなど)
  • ・被相続人本人が作成した遺言書ではなく、第三者による偽造の可能性
  • ・公序良俗に違反している内容(「全部愛人に相続させる」などの遺言)

 
これらに該当する遺言書は、遺留分を侵害している部分だけでなく、遺言書自体が無効になる可能性が高くなります。
 

遺言書の効力を争うこともできる

遺言書の内容に納得できない場合、遺留分侵害額請求ではなく、遺言の効力を争う「遺言無効確認訴訟」を起こすこともできます。
その場合、先述したような遺言が無効になるような事情がある可能性や、日付・捺印がなく、法的に有効とされる形式的な要件を満たしていないことなどを主張することになります。
自筆証書遺言ではこうした効力をめぐる争いが起こりやすく、無効となるケースはありますが、厳正な環境下で作成する公正証書遺言の場合は無効になることは多くないのが現実です。
 

遺留分を侵害されたときは遺留分侵害額請求をする

遺留分が侵害されていると判明した場合、遺留分権利者は遺留分を侵害している相続人(遺留分侵害者)に対し、遺留分侵害額請求を行使しましょう。
遺留分侵害額請求は、遺留分を侵害されている「遺留分権利者」から遺留分を侵害している「遺留分侵害者」に対し、通常は内容証明郵便により請求します。
その後、両者で協議を行い遺留分侵害者が遺留分侵害額を支払うのが一般的な流れです。
基本的に遺留分侵害者は遺留分侵害額請求を無視することはできないので、遺留分権利者と侵害者で協議の上、遺留分金額を決定します。
相続人同士で話がまとまらない場合は、調停へ、調停が不調に終わった場合は訴訟での解決を目指します。
たいていの場合は遺留分侵害者が侵害している遺留分を払って解決しますが、遺留分の金額をめぐって折り合いがつかないケースが多く見られます。
 

遺留分侵害額請求をするときは弁護士に相談を

相続人にとって遺産分けの方法が著しく不公平な遺言書は、相続人同士の争いの火種になりかねません。
ただ、遺留分を遺留分権利者に支払おうとしても、遺留分がどれくらいありどれくらいの金額が侵害されているのかなどの計算がとても複雑です。
そのため、遺留分を侵害している内容の遺言書がある場合は相続に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。
遺留分額の算出の支援はもちろん、遺留分侵害者との交渉、遺言が無効になる可能性がある場合は、必要に応じ、遺言無効確認訴訟を提起するなどのサポートもさせていただきます。
お気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者

藤岡 隆夫弁護士 (千葉県弁護士会所属所属)

FUJIOKA TAKAO

千葉県は、特に相続問題が発生しやすい土地ではないかと感じています。東京に近い一方で、昔ながらの習慣が残っており、代々続く家を守ろうとする考え方は、現代の相続法と相いれない場面があります。相続問題は、よく言われますが、「我が家に限ってもめるはずがない」と考えていたのに巻き込まれてしまう、というケースが散見されます。いつ発生するか分からない問題です。また、将来のことを考え、遺言などで準備することもできます。西船橋駅を中心とした地域で相続・遺言などの問題にお困りの際には、是非とも一度、藤岡法律事務所までご相談下さい。

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