遺産分割2 異父母兄弟がいるときの相続トラブルと対処法
異父母兄弟(姉妹)とは、父親または母親が違う兄弟(姉妹)です。
親が再婚していたり、結婚前に子をもうけていたり、愛人との間に子ができていたというような場合に異父母兄弟が存在することになります。
異父母兄弟も父親が亡くなった際の相続人になるのか。
また、兄弟が亡くなり兄弟姉妹が相続人となる場合に相続人となるのかについてみていきましょう。
目次
父親の相続において異母兄弟がいることが発覚する場合
事例1
AB夫妻の間には、子のD、Eがいました。
D、Eは父Aの子は自分たちだけだと思い込んでいました。
父Aが亡くなり、相続が開始し、母Bと子のD、Eが相続人となり、相続手続きを進めることになりました。
遺産は3000万円相当の土地建物と3000万円相当の預貯金です。
母Bが土地建物を相続して住み続け、子のD、Eは3000万円相当の預貯金を1500万円で分けることで決着しました。
ところが、父Aの戸籍を調べたところ、母Bとの婚姻前に、他の女性との間で子Cが生まれていたことが判明しました。
CもAの相続において相続人になるのでしょうか?
この事例では、D、Eから見て、Cは異母兄(姉)ということになります。
母親は違っても、Aの子であることに変わりはないため、Cも、D、Eと同様に子の立場で法定相続人になります。
そのため、法定相続分で遺産分割する場合は、
子C、D、Eがそれぞれ1000万円ずつ
相続するという形になります。
Cがいることを認識しながら、連絡しなければ分からないだろうと考えて、BとD、Eだけで遺産分割協議を行ったとしても、その遺産分割は原則として無効です。
Cから求められれば、遺産分割をやり直さなければならないことになります。
父親の相続において異母兄弟がいることが分かった場合の対処法
異母兄弟の存在がどのようにして発覚したのかにより、対処法は異なります。
1、戸籍を調べて異母兄弟が判明した場合
戸籍を調べて異母兄弟が判明したのであれば、直ちに、所在を調べて父親が死去したことと法定相続人になったことを知らせなければなりません。
その上で、遺産分割協議に参加するよう求め、参加しない意向であれば、相続放棄(または、「相続分がないことの証明書」の記載)をお願いすることになります。
2、父親が子を認知する場合
いつの時点で認知するのかにより対処法が異なります。
父親の生前に認知していれば、戸籍にも認知された子として記載されていますから、上記と同様の対処をしましょう。
父親の死後に認知されるケースもあります。
上記事例で言えば、父Aが遺言でCを認知すると書いていた場合と、Aが亡くなった後でCが認知の請求を行う場合です。
父Aが遺言でCを認知すると書いていた場合は、その遺言を無視することはできません。
遺言認知として、遺言執行者が認知届を提出します。
その際、Cが成人していれば、Cの承諾が必要になります。
認知届が提出されると、以後、Cが子の一人として遺産分割協議に加わることになります。
父Aが亡くなった後で子Cが認知の請求を行うこともあります。
具体的には、Cが裁判所に、自分がAの子であることを認めてもらうよう請求することになります。
これを「認知の訴え」と言いますが、認知の訴えは、父の死亡の日から3年を経過するまで提起可能です。
したがって、相続開始から3年が経過するまでは、異母兄弟が発覚する可能性が完全には否定できないことになります。
認知の訴えによってAの子と認められたCは、Aの遺産分割請求ができます。
ただ、遺産分割協議自体は既に終えてしまっている可能性があるでしょう。
この場合は、Cは、価額のみによる支払の請求権を有することになります。(民法910条)
上記事例で言えば、Cは、D、Eに対して合計1000万円の支払いを求める権利があることになります。
兄弟姉妹の相続における異父母兄弟(半血兄弟)
事例2
C、D、Eは、亡父Aの子です。
D、Eの母親は亡Bですが、Cの母親は別の人です。
Dは生涯独身で亡くなり、3000万円の遺産を残しました。
Dの両親ABは既に亡くなっており、祖父母も他界しています。
そのため、兄弟姉妹が法定相続人になりますが、CとEのどちらも相続人になるのでしょうか?
このような事例では、Aが亡くなった時に、Cの存在が発覚していることが多いと思いますので、不意打ち的にCが現れるケースは少ないと思います。
ただ、CもDの相続人になるのだろうかという形で問題が生じることになります。
結論から言いますと、民法900条4号に「兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。
ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。」と定められているとおりです。
Dの相続人は、EとCの二人です。
ただし、Cの法定相続分は、Eの2分の1になるということです。
具体的な数字で表すと、
Cの法定相続分は3分の1
となります。
よって、3000万円の遺産を法定相続分で分けた場合は、Eは2000万円。
Cは1000万円を相続する形になります。
異父母兄弟がいるときの相続トラブル
異父母兄弟がいるときは相続トラブルが起きやすくなります。
父親または母親が同じなのに、育った環境や亡くなった親(被相続人)との接し方が異なるためです。
また、連絡が取りにくいことからコミュニケーションが円滑にいかず、行き違いが生じやすくなります。
亡くなった親の戸籍を調べて、異父母兄弟がいることが分かったものの、現在どこにいるのかを調べるのは手間がかかります。
亡くなった親の戸籍から本籍をたどって、戸籍の附票を取ることによって、現在の住所を知ることができますが、そのための手間や費用が掛かります。
ようやく見つけたところで、今度は、異父母兄弟が当然のように法定相続分を主張して来たら、探した側としては、手間がかかったうえに、法定相続分まで取られて損した気分になってしまうかもしれません。
異父母兄弟が法定相続分を主張するのは、民法上当然に認められている権利ですが、親の介護や見舞もしていないのに「図々しい人だ」という印象を抱いてしまうかもしれません。
一方で、異父母兄弟としては、今まで実の親から親らしいことをしてもらえなかったのだから、「法定相続分ぐらいは貰って当然だ」と考えているかもしれません。
こうしたことから、行き違いが生じてトラブルになりがちです。
異父母兄弟とは言え、今まで会ったことがないのであれば、ビジネスで初対面の人と会うのと同様にアポイントを取って、冷静に話し合えるようにしましょう。
まずは、手紙などで親の訃報と異父母兄弟の存在が分かった経緯などを知らせましょう。
その上で相続手続きへの参加をお願いする形になります。
訃報を知らせる手紙と共に、いきなり「相続分がないことの証明書」などを同封して、署名の上で返送を求めると言った対応は、相手の意向や権利を無視した乱暴な対応になるので注意してください。
まずは、遺産分割に参加するかどうか、異父母兄弟の意向を確認したうえで、参加しないし、相続分もいらないという回答であれば、改めて、「相続分がないことの証明書」などを送るようにしてください。
異父母兄弟が遺産分割に加わるといった回答をしてきても、「図々しい人だ」と考えてはいけません。
実の親と接する機会が少なかったことを慮ってください。
異父母兄弟が絡む相続トラブル防止のためには?
異父母兄弟がいるときの相続トラブルは、相続が発生した時に、戸籍を調べて初めて、異父母兄弟がいることが発覚した場合に生じやすくなります。
それを避けるために、親としては、生前に異父母兄弟がいることを告白しておくべきでしょう。
その上で、現在の家族と異父母兄弟を生前に対面させるか、連絡先を知らせておくようにした方がよいでしょう。
また、生前に一定の財産を異父母兄弟に贈与しておくか、一定の遺産を相続させる旨の遺言書を書いておくことも、遺産分割時のトラブル防止に有効です。
千葉県は、特に相続問題が発生しやすい土地ではないかと感じています。東京に近い一方で、昔ながらの習慣が残っており、代々続く家を守ろうとする考え方は、現代の相続法と相いれない場面があります。相続問題は、よく言われますが、「我が家に限ってもめるはずがない」と考えていたのに巻き込まれてしまう、というケースが散見されます。いつ発生するか分からない問題です。また、将来のことを考え、遺言などで準備することもできます。西船橋駅を中心とした地域で相続・遺言などの問題にお困りの際には、是非とも一度、藤岡法律事務所までご相談下さい。