生前贈与と相続は何が違う?相続問題を未然に防ぐ生前贈与の活用術! |千葉県船橋市の相続の経験豊富な弁護士

生前贈与と相続は何が違う?相続問題を未然に防ぐ生前贈与の活用術!

自分の財産を家族や大切な人に渡す方法として一般的に「相続」と「生前贈与」の2つがあります。

相続は生前に綿密な準備が必要で、ちょっとでも作成ミスや偏りがあると親族同士が「遺産をめぐる争い」に発展しかねないほど難易度が高い財産の渡し方です。

それに対し生前贈与は自分が生きている間に家族や大切な人に、自分の意思で自由に計画的に財産を譲り渡すことができる渡し方です。

生前贈与を理解し上手に活用すれば、親族同士のよけいな争いごとを回避し、税金などの支払い負担を大きく減らしてくれます。

では、生前贈与とは一体どのようなものでしょうか。

今回の記事は生前贈与と相続は何が違う・相続問題を未然に防ぐ生前贈与の活用術について、どこよりもわかりやすくご紹介します。

生前贈与とは何か?

生前贈与とは本人が生きている時に自分の財産を誰かに渡すことです。

「贈与」という大きな枠組みの中に含まれ、財産を無償で渡す行為の1つです。

一般的には「生前贈与」は、父母、祖父母から子どもや孫に財産を渡すという意味で使われています。

生前贈与が活用される目的

生前贈与が活用される目的は主に次の5点です。

・財産を計画的に誰かに渡したい場合

・相続後の相続税を減らしたい場合

・特定の財産を特定の誰かに確実に渡したい場合

・子どもや孫への住宅購入資金や教育資金、生活費の支援をしたい場合

・財産を寄付して社会貢献をしたい場合

生前贈与は、贈与する財産の種類や金額や相手などによって、活用する制度や控除額が異なります。

現在、生前贈与を検討されている場合には一度、生前贈与に詳しい弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

贈与とは何か?

こちらでは生前贈与をより理解していただくために、生前贈与の元になる贈与についての解説をします。

贈与とは他人に無償で財産を渡す契約のことです。

贈与の正式名称は「贈与契約」という契約です。

財産を渡す側を「贈与者(ぞうよしゃ)」、財産を渡される側を「受贈者(じゅぞうしゃ)」といいます。

生前贈与を元に例をあげると、財産を渡す側の父母、祖父母が贈与者、財産を渡される側の子どもや孫が受贈者という関係になります。

贈与は贈与契約といいますが、実際に「契約書」をつくるかどうかは関係ありません。

当事者同士の合意があれば成立する契約です。

贈与の根拠は「民法第五百四十九条」によります。

(贈与)

第五百四十九条

「贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。」

民法(e-Gov法令検索)から引用

生前贈与の種類

生前贈与は対象の期間や税制上の取り扱いによって大きく2つの種類に分かれます。

正しく理解することで、上手に使い分けることが可能です。

こちらでは生前贈与の2つの種類についてご説明します。

①暦年贈与

暦年贈与とは、1年間の贈与額が最大110万円以下ならば贈与税がかからない贈与の方法のことです。

特徴は1年ごとに契約を結ぶ贈与契約であることです。

暦年とは、カレンダー上で1年単位で区切ったもので、1月1日から12月31日までの1年間のことという意味になります。

例をあげると、祖父が孫に2025年の1月1日から12月31日までの間に100万円をあげた場合に暦年贈与の対象になります。

暦年贈与の活用に向いている人は次の人たちです。

・相続開始までに期間的な余裕がある人

・贈与したい相手が多い人

②定期贈与

定期贈与とは、ある一定の期間中に、決まった額の財産を基礎控除の範囲内で繰り返し渡す贈与の方法のことです。

特徴は贈与する金額が決まっており、それを定期的に繰り返して行われることです。

例をあげると祖父が孫に10年間、毎年100万円ずつ渡した場合には定期贈与の対象になります。

ただし定期贈与には注意点があります。

それは贈与者が最初から受贈者に「これから〇年間、〇〇万円の贈与を続ける」という約束をしてはいけないことです。

理由はその約束は税務署から「一括贈与」とみなされるからです。

この場合、約束をした年に「定期金給付契約に基づく定期金に関する権利」の贈与があったとみなされ、贈与した全額について贈与税が課せられます。

そのため生前贈与をするには一括贈与を回避するために、毎年その年ごとに贈与契約を結ばなければなりません。

ポイントは財産を渡す総額をあらかじめ決めないことです。

そうすれば税務署からにらまれることはありません。

定期贈与が向いている人は財産を計画的に誰かに移転したい人です。

生前贈与が成立するための要件とは?

生前贈与は、意思を持った財産の移動、相続税対策として有効な手段です。

ただしその成立にはいくつかの要件が存在します。

これらの要件を満たさないまま活用すれば、本来払わないでよいはずの贈与税が課せられるかもしれません。

こちらでは生前贈与が成立するための要件についてご説明します。

①お互いの合意が必要

1つ目の要件は「贈与者」と「受贈者」双方の合意が必要であることです。

贈与者側が「財産をあげました」、受贈者側が「財産をもらいました」という証明ができれば生前贈与は成立します。

この場合口頭でもOKで、契約書があればなおよしです。

注意点は贈与者が高齢で認知症だったり、受贈者が年齢が若くて贈与財産を自由に使えない場合は贈与が成立しない可能性があります。

②契約書の作成

2つ目の要件は契約書が作成されていることです。

口頭での合意だけでも生前贈与は成立しますが、贈与契約書が作成されていることで有効な法的な証拠になります。

贈与契約書には最低でも5要素がすべてそろっている必要があります。

贈与契約書の5要素に関しては「生前贈与の手続きの流れ」でご紹介します。

生前贈与と相続の違い

生前贈与と相続は、どちらも財産を移動させる行為です。

ただしさまざまな点で異なります。

こちらでは生前贈与と相続の違いについてわかりやすくご紹介します。

生前贈与 相続
特徴の違い 本人が生きているうちに

自分の意思で財産を誰かに渡すこと

本人が亡くなった後に、自分の財産を相続人に

引き継いでもらうこと

手続きの方法 口頭での合意、または贈与契約書の作成で可能 遺言書、または遺産分割協議で行われる
メリット ・自分の意思で渡せる

・自分が生存中に渡した相手に早めに財産を活用してもらえる

・相続税対策が計画的にできる

・正式な遺言書があれば渡す相手や財産を細かく指定できる

・一度にまとまった財産を渡すことができる

課税される税金 贈与税 相続税
課税の対象者 受贈者 相続人または受遺者

相続とは、被相続人の財産や権利・義務を、残された相続人が引き継ぐ制度のことです。

生前贈与を非課税にできる各種控除

生前贈与は、相続税対策として有効な手段の一つです。

ただし賢く活用しないと逆に贈与税がかかってしまうリスクがあります。

そうならないためにも生前贈与に関する制度をしっかりと理解し、適切に各種控除を利用することで、効果的な生前贈与を行うことが可能です。

こちらでは生前贈与を非課税にできる各種控除について解説します。

非課税にできる各種控除は生前贈与の申告と納付に関係するので非常に重要です。

①暦年課税制度の基礎控除

暦年課税制度の基礎控除とは1年間にもらった生前贈与の合計が110万円以下なら贈与税がかからない控除のことです。

暦年課税制度の基礎控除は生前贈与のベースになる控除です。

2025年3月時点での暦年課税制度の基礎控除額は110万円以下になります。

贈与税の課税制度は「暦年課税制度」か「相続時精算課税制度」の2つがあります。

1年間の合計額が110万円以上の場合は、どちらか1つを選択して贈与税の申請・納付をしなければなりません。

2023年までは「暦年課税制度」が圧倒的に使いやすいといわれていましたが、2024年以降は改変されて若干使いにくくなったといわれています。

贈与税の控除とは、かかった贈与税の全額から一定額を差し引いて税の負担を抑えてくれる制度のことです。

②相続時精算課税制度の特別控除額

相続時精算課税制度の特別控除額とは、2,500万円までの贈与なら非課税になる控除のことです。

贈与時の2,500万円のみしかもらわない時には有効な制度です。

ただし注意点があります。

それは相続後に、相続財産をもらうと「生前贈与時の2,500万円」と「相続財産」の合計額に対して「相続税」が課せられることです。

また何十年も前の贈与も「相続税」の対象になるので注意が必要です。

2024年から「相続時精算課税制度」は改善されて使いやすくなりました。

今後は「相続時精算課税制度」が今まで以上に使われることが予想されます。

③配偶者控除

配偶者控除とは結婚して20年以上の夫婦が住むための家やその購入資金を生前贈与する時に非課税となる控除のことです。

配偶者控除を活用すると控除の合計額は110万円の基礎控除、最大2,000万円の配偶者控除の合計2,110万円が控除されます。

配偶者控除は通称「おしどり贈与」とも呼ばれています。

④住宅取得等資金の贈与非課税制度

住宅取得等資金の贈与非課税制度とは親や祖父母が、子や孫に彼らが住むための家を買ってあげる時に最大1,000万円まで贈与税がかからない控除のことです。

正式名称は「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」といいます。

省エネ住宅なら1,000万円まで、一般住宅なら500万円まで非課税になります。

現在のところ期限は令和6年1月1日から令和8年12月31日までの間です。

⑤教育資金の贈与税非課税制度

教育資金の贈与税非課税制度とは、父母や祖父母などが、30歳未満の子や孫に教育資金を渡す時に最大1,500万円まで贈与税がかからない控除のことです。

正式名称は「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税」  といいます。

現在のところ期限は平成25年4月1日から令和8年3月31日までの間です。

⑥結婚・子育て資金の贈与税非課税制度

結婚・子育て資金の贈与税非課税制度とは親や祖父母が、子や孫に結婚や子育てのための資金を渡す時に最大1,000万円まで贈与税がかからない控除のことです。

受贈者の対象は18歳以上50歳未満の人です。

正式名称は「直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税」  といいます。

現在のところ期限は平成27年4月1日から令和7年3月31日までの間です。

⑦特定障害者に対する贈与税非課税制度

特定障害者に対する贈与税非課税制度とは特定の障害を持つ人が父母や祖父母から贈与をしてもらった時に最大6000万円まで贈与税がかからない控除のことです。

特別障害者は最大6000万円まで、特別障害者以外の特定障害者は3000万円までが贈与税が非課税です。

ただし通常の贈与はできません。

信託銀行に財産を委託することで活用できます。

生前贈与の手続きの流れ

生前贈与は、贈与者と受贈者の合意に基づいて財産を移動する行為です。

適切な手続きを踏むことで、贈与税の負担を軽減し、スムーズな財産移動を実現することができます。

こちらでは生前贈与の手続きの流れについて解説します。

①生前贈与の内容を決める

1つ目は生前贈与の内容を決めることです。

具体的には誰に・どの財産を・どんな目的で贈与するのかを決めることです。

この3つを決めることで最適な「制度と控除」を選択することができます。

②生前贈与に関するお互いの合意をとる

2つ目は生前贈与に関するお互いの合意をとることです。

合意は「贈与者」と「受贈者」同士で、口頭でもよいので確実な合意をとることです。

もしされてないと生前贈与が成立しないので確実に合意をとってください。

③贈与契約書を作成する

3つ目は贈与契約書を作成することです。

生前贈与に関する取り決めを文書化します。

次の5要素が必須です。

・贈与する人の名前と住所

・贈与される人の名前と住所

・贈与契約を結んだ日付、実際に贈与をする日付

・贈与する財産の内容(財産の種目・金額・所在など)

・贈与する方法

④実際に贈与を行う

4つ目は実際に贈与を行うことです。

実際に「贈与者」から「受贈者」へ財産の移動を行います。

後々のことを考えて、財産の移動時には次の対策をとっておいてください。

・金銭を贈与する場合は、銀行振込にする

・不動産を贈与する場合は、所有権移転登記を行う

など、これらを税務署に証拠として見せられるようにしておきましょう。

⑤贈与税の申告と納付

5つ目は贈与税の申告と納付です。

生前贈与が年間110万円を超えた時には税務署に対して贈与税の申告をし、適切な贈与税の納付を行います。

生前贈与のタイプに合せて最適な制度を選択し、お得な控除の恩恵を受けられてください。

生前贈与の手続きは個人で行うには難易度が高いので、まずは生前贈与に詳しい弁護士に相談してみることをおすすめします。

生前贈与に関する最新の改正点

生前贈与に関する最新の改正点とは、2024年1月1日から「生前贈与加算」の対象期間が3年から7年に延長されたことです。

生前贈与加算とは被相続人が亡くなる前の一定期間内に、暦年課税制度の対象となる生前贈与を受けていた場合、その贈与された財産を相続財産に加算して、相続税を計算する仕組みのことです。

簡単にいうと、相続が発生した数年前にまで遡って、暦年課税制度を使って移動した生前贈与財産を相続財産に加算して、相続税の対象にするということです。

改正前と改正後では次の点が異なります。

・改正前:生前贈与加算の対象は相続開始前の3年以内

・改正後:生前贈与加算の対象は相続開始前の7年以内

生前贈与加算の7年以内ルール変更は2024年1月1日以降の贈与から適用されます。

2023年12月31日までの生前贈与は3年以内のルールがそのまま適用されます。

生前贈与加算の7年延長の理由(トピックス) 

生前贈与加算の7年延長の理由は欧米などで贈与・相続の税負担を一定としているところが多いからです。

基本的な考えとしては欧米の制度に合わせる流れです。

若干制度は異なりますが、欧米で相続時に相続財産に持ち戻される贈与財産の期間はドイツでは過去10年分、フランスでは過去15年分、アメリカは一生涯となっています。

現状、日本の生前贈与加算は7年ですが、今後は欧米各国(主にG7諸国)と足並みをそろえる形でさらに延長化されることも予想されます。

まとめ

今回の記事は生前贈与と相続は何が違う・相続問題を未然に防ぐ生前贈与の活用術についてご紹介しました。

生前贈与は相続後にかかる相続税などの問題を未然に防ぐには有効な手段の1つです。

ただし理解ができていなかったり、正しい活用を行っていないと、相続後にまとめて相続税としてかかってくる場合もあります。

そうなってしまうと、せっかくの生前贈与がムダになるかもしれません。

弁護士に相談することで次の3つのメリットを得ることができます。

・計画的な生前贈与に関するアドバイス

・贈与契約書の作成

・生前贈与財産が遺留分請求された場合の対応方法の助言

もし生前贈与の活用方法でお悩みであれば、ぜひ藤岡法律事務所に相談してみてはいかがでしょうか。

この記事の監修者

藤岡 隆夫弁護士 (千葉県弁護士会所属所属)

FUJIOKA TAKAO

千葉県は、特に相続問題が発生しやすい土地ではないかと感じています。東京に近い一方で、昔ながらの習慣が残っており、代々続く家を守ろうとする考え方は、現代の相続法と相いれない場面があります。相続問題は、よく言われますが、「我が家に限ってもめるはずがない」と考えていたのに巻き込まれてしまう、というケースが散見されます。いつ発生するか分からない問題です。また、将来のことを考え、遺言などで準備することもできます。西船橋駅を中心とした地域で相続・遺言などの問題にお困りの際には、是非とも一度、藤岡法律事務所までご相談下さい。

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